池上彰の世界の見方北欧

北欧4国の国事情。厳しい環境と列強の間にはさまれて独自の政治、文化の路線を歩む。税負担は高いが、高福祉、教育重視は少ない人口で生き抜くための合理的な選択。日本が見習うべき制度も多い。中学校での授業にしては内容のレベルは高い。シリーズを遡る形…

オードリーヘップバーンの言葉

伝説の女優の発言を抽出し、彼女の人生を追う。1929年生まれ、ナチスの時代を生き抜き、バレリーナを目指すが、身長が高すぎて断念。本人はやせぎすの体形にコンプレックスを持っていたようだ。ローマの休日で銀幕デビュー。その後の活躍は知られている…

世界を驚かせたスクラム経営

2019年のラクビーワールドカップ日本大会。その舞台裏で運営に当たった人々のノンフィクション。強豪国以外では初めて、そしてアジアでの開催ということで前例がなく準備は遅々として進まない。国際組織からの要求は高く、そして上納金の義務。唯一の収入は…

宮部みゆきがおすすめした本

読売新聞の書評欄。2015-2019年分。洋の東西を問わず小説からノンフィクションまで幅広い。美術関係も何冊か目を引く。少し古いが興味をひくタイトルは多数。図書館の予約が入り、急遽読破。 宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本 2015-20…

行為と妄想

碩学の履歴書。京都の商家出身。三高から京大へ。今西錦司の門下。生物学から民俗学へ。民俗学博物館の初代館長。知的生産の方法の著者としても名高い。学生時代は山岳部の猛者としてならし、アジア奥地を探検。フィールドワークを大事にする。驚かされるの…

漂流する日本企業

日本経済の失われた30年の原因とその対処法を説く。2度の金融危機により、銀行に依存できなくなった企業は、内部留保を高め積極投資を抑制した。一方で外圧によりガバナンスが流行りとなり、配当性向を高めた。直近では投資額より配当額が高い異常な状況…

成瀬は天下を取りに行く

滋賀、大津、膳所が舞台の青春小説。ヒロイン成瀬は型破りの天才少女。すべてに才能を発揮するが、周囲の評判は一切気にせず、独自の哲学で邁進する。同じマンションの親友が良いパートナーとなり、漫才コンビを組む。中学生から高校卒業までを描くが、恋愛…

文庫旅館で待つ本は

連作集。小さな旅館が舞台。戦前の蔵書からなる文庫があり、若女将が客の悩みに応じた一冊を推薦する。同じ匂いをかぎ分ける特殊能力のなせる技。全5編の前半は軽めだが、後半にかけて重みを増し、最終編は文庫の成り立ちまで遡る。それぞれの1冊があるが…

キャラクターたちの運命論

大ヒットした少年漫画5編を取り上げ、民俗学的な検証を行う。主人公ではなく脇役に焦点をあてる。いずれも原作を完全には読んでいないので今一つ理解が進まない。逆にマンガ自体がよく構成され、それは伝承文学にも通じていることに感心する。 キャラクター…

一日一文

古今東西の名著を365日分紹介する。範囲は哲学から詩歌まで幅広い。有名どころはほぼ網羅されているが、非常に短い引用なので、逆に主張がわかりにくい。スタンプラリーのお供で読破。 一日一文 英知のことば (岩波文庫) 岩波書店 Amazon

旅する練習

小説家である著者とサッカー少女の姪が、我孫子から鹿島まで利根川沿いを徒歩で下る。著者が風景を描く間に、姪はリフティングの練習。快活な彼女が旅を朗らかなものにする。途中知り合った女性との出会いと別れが、少女の心の成長を導く。ところがラストは…

90歳の人間力

人生訓。短めの文章で人の生き方を簡潔に諭す。全編を通じて、失敗が人を大きくする。恐れずに挑戦することを強調。日本人は目で考える、すなわち外見や名前に惑わされ、本質を見極める力が乏しいとの指摘。既出の著作からの焼き直し。ご本人は2020年に逝去…

バスクル新宿

新宿バスターミナルを発着する長距離バスを舞台にする連作集。各編軽いミステリー仕立てで、思わず引き込まれる早い展開。結局はみな良い人たちで、ハッピーエンドのメルヘンタッチ。エンタメとしては楽しめた。巨大バスターミナル自体への興味が少し湧いた…

人物名鑑古今東西いま関西

古今東西の人物短評。著者の専門から思想史、哲学史にページを割く。タイトルにある関西部分は冒頭の第一章だけ。哲学、古代ローマ史についてはこちらの知らない人物が多く、イメージがついて行かない。教養不足を露呈する結果に。読破は正直しんどかった。…

祖母姫ロンドンへ行く

祖母と孫の豪華なロンドン旅行記。ファーストクラスで飛び、バトラーのつく一流ホテルに滞在するというからかなりの富裕層。上流の貴婦人であった祖母は、老齢もあってマイペースというか我儘。著者は振り回されるが、夜はバットガールになり留学時の旧友に…

車のある風景

愛車遍歴エッセイ。編曲家として名を馳せているが稀代のカーマニアでもある。高校生の時に軽免許を取得。以来何十台もの車を乗りこなす。収入の増加に従い、外車にシフト、中でもマニアックな選択が多い。少し庶民とはかけ離れた世界だが、車あるあるはくす…

羊の目

任侠長編小説。夜鷹の子に生まれ、ヤクザと愛人に育てられた主人公。育ての親である親分に裏切られながらも、終生忠誠を尽くす。全篇をおおう暴力と殺人。出来すぎた人間関係は設計されたプロット。思わず引き込まれるが、少し長かったか。スタンプ収集のお…

缶詰だよ人生は

缶詰博士のエッセイ。自らの生い立ちから、缶詰レシピまで。軽めの文章と素朴なイラスト。軽めの内容だが、常識の範囲内でもう一つ足りない。もう少し缶詰紹介に特化しても良かったのではないか。時代的にはマッチするので懐かしい部分はあった。サバ缶とヤ…

夜明けを待つ

エッセイとルポルタージュ集。生と死、日本語教育、宗教と結構重いテーマを扱ったものが多い。淡々とした記述で、本質、真実にまっしぐらに進む作者の真骨頂。本人は希少がんを患い、余命短いとのこと。好きなノンフィクション作家。惜しまれる。 -ダブルリ…

もしもしアッコちゃん

自伝エッセイ。九州の電電公社一家に生まれ、子供のころは転校を繰り返す。両親とも兄弟が多く。親戚にも恵まれる。宮崎西高校から、金沢美大へ。漫画家への夢はもつもののガツガツはせず、応募第一作が採用される幸運。才能豊かなのだろう。傍らにはつねに…

老いてこそユーモア

ユーモアに関するエッセイ。実例を示しながら、古今東西の笑いを考察する。バックにあるのは圧倒的な教養。ネタの対象範囲は広いが、エスプリに思わずにんまりさせられる。繋ぎの一冊としては十分な内容。 老いてこそユーモア (幻冬舎新書 あ 17-1) 作者:阿…

失敗する自由が超越を生む

量子コンピューターの第一人者である東大の古澤教授。その大胆な生き方を紹介する。研究は趣味で本職はウィンドサーフィンと豪語。学生には研究生活をゲームのように愉しめと導く。人生の転機にはかならず幸運が巡りくるがそれは実力がなせるわざだろう。組…

池上彰の世界の見方フランス

独自の政治、文化を誇るフランス。その内実をわかりやすく解説する。独特の政教分離、植民地からの移民、教育システムとあまり知られていないことが多く興味深い。高校生への事業形式であるが、質疑応答もレベルが高い。シリーズ展開に期待。 -EU本部をブ…

プアジャパン

時評。急激な円安もあり国際的な地位を下げる日本。インバウンドの増加は単純に喜べる現象ではない。政府の補助金政策と円安誘導でイノベーションを怠ったのが最大の要因。打開策はデジタル人材の育成と確保。企業ごとの固定的な人事政策を打破し、流動性を…

問題解決のための名画解説

著書は米の美術史家。名画を鑑賞することで、ものの見方には様々な観点が存在することをセミナーで角界に伝えている。特に警察や医療関係には公表とのこと。写真で美術作品の実例を示し主張を繰り返す。興味を引かれる部分とそうでない部分の山谷はあるもの…

老いては好きにしたがえ

老境に入った著者の人生実践論。絶頂期にお笑い界から転換。ボクシング、絵画、ヨガをそれぞれ極める。それぞれゼロからのスタートだが、反復練習で頂点をめざす。現在は納得の上離婚。一人暮らしは一日一食の宗教者のような暮らし。決して枯れたわけではな…

凡人が天才に勝つ方法

歌手そしてプロデューサーとしられる著者の人生を切り拓く手法。自らを凡人と位置づけ、たゆまぬ努力と工夫で現在の地位を確保した。内容的には極めて常識的。好きな分野をみつけ、ともかく数多く作品を生み出す。一定の確率でヒットは生まれ、自らは上達す…

逆境を生き抜くための教養

著者は脳出血で右半身マヒ。電動車いす生活となるが、リハビリを乗り越えてAPU学長に復帰。改めて人生の逆境に対する身構えを示す。基本的な考え方は、運命論となるが、起こったことは受け入れ、そこからの展開を前向きに考える。その糧となるのは、本、人、…

敗軍の名将

太平洋戦争。戦後生まれの著者が悲惨な戦場から4人の名将の戦いぶりを描いたノンフィクション。インパール作戦の佐藤、宮崎、沖縄戦の八原参謀、海軍芙蓉航空隊の美濃部。理不尽な大本営や上層部の命令に反してでも、合理的な自らの理想を貫く。ただその正…

屋根裏プラハ

写真家によるエッセイ。プラハの街に魅せられ、アトリエを持つ。共産党時代からの街の変遷をレンズを通して見てきたことになる。盟友である現地のカメラマンとの交流。尊敬する先人へのオマージュも。内容の濃い硬質な文章で読破に時間を要した。沢木氏の推…