軍事

2030半導体の地政学

今や戦略物資となり、保護主義の起爆剤となった半導体にまつわる最新情報をまとめる。TSMCの誘致合戦が代表的だが、米中欧の思惑と戦略に左右される。業界筋の動向はほぼ周知の通りだが、知らぬ裏話もあり興味深い。立ち遅れた日本は新規技術に活路を見出す…

日米開戦陸軍の勝算

開戦前の陸軍では、「秋丸機関」に気鋭の経済学者を集めて国力を分析。唯一の勝機を西進論に見出す。ドイツと連携しイギリスを経済的に封鎖、降伏に追い込むというプラン。山本五十六に代表される海軍の早期攻勢につぶされたとする。戦後レジュームの中でア…

暁の宇品

陸軍の海上輸送を統括した宇品の船舶司令部。傍流ではあるが船舶の神と呼ばれた田尻中将とその部下たちの苦戦と活躍を描くノンフィクション。意外であるが世界に先駆け、上陸用舟艇である大発を開発し、専用輸送船と合わせて敵前上陸を可能とした。大戦中は…

兵諫

西安事件を題材にした歴史小説。タイトルは武力をもって君主を諫めること。張学良がクーデターで蒋介石を拘束し、国共合作がなったとする。これは二二六事件と同じ年の出来事であることに驚かされる。著者の立ち位置は東北軍閥に好意的。馬賊の良き伝統を称…

太平洋の巨鷲山本五十六

山本五十六提督の再評価。真珠湾の戦果と自らの戦死により偶像神格化され、未だに評価が定まらない。本書では多数の文献からその人間性はあえて無視し、用兵思想に焦点をあてて評価を試みる。基本的には好意的で特にその統率力、戦略性は傑出していたとする…

新世界秩序と日本の未来

対談。この二人はシリーズ化しておりすでに3作目とのこと。米中日の直近の政治状況と近未来の予想がテーマ。自由と平等の間で分裂が進むアメリカ。少子高齢化を見越して国力ピークを迎える中国。国益より権力維持に奔走する日本。指摘はなかなか手厳しい。…

最終飛行

星の王子様で知られるフランスの作家サン-テグジュベリが主人公の長編小説。パイロット出身で大戦中は空軍で偵察任務にあたる。すでに予備役編入の年齢だが、本人は祖国愛から従軍を志願。最期は撃墜され戦死を遂げる。占領下の祖国を離れ北アフリカ、さらに…

ハイブリッド戦争

副題にあるようにロシアの最新の国家戦略を、テクノロジーと地政学的な戦略から解説する。サイバー攻撃とハードパワーにより、民意を有利に導き、軍事力と結合させるハイブリッド戦略。クリミア併合と米大統領選で成果を上げる。正確な評価は証拠が残らない…

アンブレイカブル

連作小説。主人公は内務省のエリート官僚。特高警察を指揮し、戦前戦中を通じて思想弾圧、小林多喜二や三木清を死に追い込む。はじめは理想を追う施策でも、巨大組織は自己防衛のために拡大を続け、人間性を圧殺していく。作者の特異な諜報ジャンルのエンタ…

テレビが伝えない国際ニュースの真相

予備校の人気講師による最新世界情勢の解説書。Q&A形式で簡潔に解説する。米中あたりはほぼ既知の事実が多いが、中東情勢になると知らぬことが多く興味深い。立ち位置少し右寄りのリアリスト。トランプ、安倍政権には一定の評価。強権の習近平には危惧を表す…

いま救国

自民党の対中国強硬派と知られる著者の評論。安倍1次内閣から大震災まで経済誌への連載コラムがベース。日本の弱点である理念なき外交をバサバサ切る。かっては政治、外交は2流でも、経済力のバックアップがあったが現在ではそれも怪しい。バリバリの右派…

東條英樹

新たな視点で戦時宰相の実像に迫る。戦陣訓に代表されるように精神主義者のイメージが強いが、これは戦後のイメージで、実際は有能な実務家の面が強い。ただし陸軍の権益確保と人事抗争に強面を発揮した。庶民派を演出し、インテリ層の受けは悪いが、一般大…

宇宙に行くことは地球を知ること

異色の取りあわせによる対談。宇宙大好きの矢野顕子が、3回目の宇宙に臨む野口聡一の経験や人生観、哲学を引き出す。宇宙体験は基本的に引き算の世界。重力も空気もない無の世界で、地球の奇跡を感じられる。また帰還後は燃え尽き症候群でメンタルを病む飛…

はやぶさ2最強ミッションの真実

はやぶさ2のプロマネ自ら、10年にわたるミッションのすべてを語る。初代に比べて非常にスムースに思えるが、立ちはだかるのは小惑星リュウグウの厳しい地形。先端技術と柔軟な対応で、高精度のタッチダウンを2度成功させる。宇宙研と民間企業からなるプ…

OKI

近未来軍事シュミレーション小説。半島から武装勢力が隠岐に侵攻、日本に対する情報戦。一発の銃弾も撃たず、世論を分断し内部からの崩壊をめざす。平和ボケした日本ではありうる展開で空恐ろしい。ラストは一旦撤退するが、続編に含みを残す。フィクション…

宇宙の覇者ベゾスVSマスク

今を時めく米のIT長者が宇宙開発に挑む。幼い頃アポロに触発された夢の実現。官僚化したNASAを反面教師とする。技術開発は容易ではなくなんども爆発や失敗に見舞われるが、めげないチャレンジャー精神。アプローチはウサギと亀に例えられるように両極端だが…

自衛隊は市街戦を戦えるか

長年ソ連を仮想的としてきた陸自は、対テロ戦略等の現代の戦争に備え、新しい体制に組み替える必要がある。著者は連隊長として率先して市街戦訓練を導入。装備や戦略はもちろんだが、まずその組織に染み付いた病理を克服する必要を説く。旧軍の悪弊を引継ぎ…

フラウの戦争論

戦争論の著者ででるクラウゼヴィッツの物語。プロセイン軍の参謀として、ナポレオン戦争を戦う。妻であるフラウは貴婦人であるが、夫の仕事に理解は無く夫婦仲は円満と言えない。一方の主役であるナポレオンは軍事的天才であり、圧倒的なカリスマで国民皆兵…

青い星までとんでいけ

SF短編集。ハードウエアの宇宙探索ものやライトノベル的な美少女恋愛ものもあり、バラエティには富む。エンタメとして十分楽しめたが、のめりこむほどではない。今後の読書領域にてSFをどうするか微妙なところ。 青い星まで飛んでいけ 作者:小川一水 発売…

邦人奪還

軍事IF小説。尖閣への中国侵攻排除、北朝鮮からの拉致被害者奪還と陸海の特殊部隊が大活躍する。元自衛官の著者ゆえにPRになるところはやむを得ないが、リアル感は十分。主題はむしろ法制上闘えない組織にある。日本政府とその背後にあるアメリカの戦略が垣…

超限戦

中国軍人が書いた軍事論。湾岸戦争の結果を色濃く反映するが、非軍事部門への展開を強く示唆。未来の戦争はサイバー空間や経済、メディア戦が主戦場になるとする。ハード技術だけでなく、思想の転換が必要。20年前なので未だ米中間には戦力差がある局面。…

火星の人

SF大作。アクシデントで火星に一人残された主人公が、自らの科学的知識でサバイバル。植物学者でエンジニアの経験を活かす。何より活力は明日を信じることと切り替えの早さ。最後は残りのクルーが身を挺して救出にあたる。評判に違わぬ秀作だが、少し長す…

知略の本質

戦史から学ぶ戦略、組織運営論。4つの闘いを解析。独ソ戦、バトルオブブリテン。ベトナム戦争、イラク戦争。特に印象的なのはベトナム。ホーチミンの指導の下、フランス、アメリカを退ける。機動戦と持久戦の二項動態の中で最適点をみつけることが重要。物…

スパイの妻

舞台は戦前の神戸。貿易商を営む正義感の強い夫とその美しい妻。商用で訪れた満州で知った細菌部隊の非人間性に憤慨した夫は、その事実を米国に知らせようとする。結果として妻を囮に利用した形。それも彼女を安全圏に残す彼なりの愛情。ジェトコースターノ…

失敗の本質と戦略思想

名著の焼き直し。キーとなる重要な会戦を孫子の兵法とクラウゼヴィッツの戦争論から見直す。問われるのは作戦レベルで無く、戦略レベル。確固たる終戦プランが無く、開戦したのが最大の愚。空気に流される社会風土は今も本質的には変わっていない。このシリ…

不思議な鉄道路線

明治初期鉄道路線の決定に際して、常に存在した陸軍の圧力。海岸線を外し、内陸に敷設することを強く要求する。経済性からほど遠いが、それだけ海外勢力への脅威があったことの査証。奥羽本線と現肥薩線が代表例。会議録等の原文引用が多いが、さすがにスキ…

なぜ必敗の戦争を始めたのか

偕行社で行われた、旧陸軍エリートたちの座談会。著者が新たに解説と補足を加えた形式。世にゆう陸軍悪玉論を否定。三国同盟は松岡外相の独走。南部仏印進駐は海軍強硬派の暴走とする。海軍はすでに出師にかかっており、米による石油禁輸は即開戦を意味して…

翼を下さい

開戦直前、初の世界一周を果たした「ニッポン号」の物語。毎日新聞社の出資であるが機体は96陸攻。そこにアメリカ人の前年に太平洋上で失踪した女性パイロットが乗り込んでいたというフィクション。実際に失踪事件は米軍によるスパイ容疑もあったとの種本…

自衛隊の闇組織

自衛隊に存在する諜報機関。大臣、内閣には報告せず、シビリアンコントロール上大きな問題である。旧中野学校の系統を引く。著者は共同通信の記者として長年の取材でスクープをものにする。他社は追随せず、また機密保護法の成立後となったので敗北感が大き…

紺碧の果てを見よ

海軍士官たちの戦いを描く。江田島入学時に4人のクラスメート。一人は病死するが個性豊かな3人はそれぞれ選んだ分野で戦う。主人公は意見具申が上層部の意に反し、海防艦での護衛任務。戦史を俯瞰するのでなく情報の限定された現場での戦いは生々しい。主…