海外

RISE

南アフリカラクビー代表の主将を務める著者の自伝。黒人スラムの出身。ラクビーの才能を見出され、奨学金を受けエリート校に転校。プロチームに所属し、南ア代表となる。ポジションはフランカー。若い時は飲酒で悪さもしたが、キリスト教の洗礼を受け、敬虔…

紛争地の看護師

国境なき医師団の看護師の体験記。著者は日本の看護師であり、国際貢献のためにオーストラリアに留学したことにまず驚く。英語を身に着け、17回も戦地に赴く。シリア、イエメン、ガザ。想像以上に悲惨で過酷な状況。安全は考慮されているが、保証は全くな…

ナポレオン街道

稀代の英雄の足跡を訪ねる紀行文。生誕の地コルシカ島からパリ、イタリア、エジプトと巡る。行く先々で無頼派らしくギャンブルと酒に興じる。それも旅情を掻き立てて良い。ナポレオンにまつわる書物は30万冊を超えるという。軍事的才能は言うに及ばず非常に…

岸辺露伴ルーヴルへ行く

映画のノベライズ。売れっ子漫画家の主人公が、謎の漆黒の絵画に挑む。若い時の自身の謎の美女との経験も絡む。最後はホラーサスペンス仕立て。まあエンタメとしては楽しめるレベル。 映画ノベライズ 岸辺露伴 ルーヴルへ行く (集英社オレンジ文庫) 作者:北…

安倍晋三実録

NHKの番記者として、長年安倍氏に張り付いた著者。没後にその実績、魅力を普段表面には出ない裏の部分まで踏み込んで記録。基本はシンパ。最大の功績は地球儀を俯瞰する外交。誰に対しても物おじせず、堂々と日本の国益を主張する。海外首脳と個人的なネット…

自然、文化、そして不平等

講演をまとめたもの。経済史上の格差問題について豊富なデータを基に平易に解説。各国ともに累進課税がその対策の中心となるが、レーガノミクスで緩和したアメリカを中心に格差が拡大する方向にある。より深刻なのは環境負荷で、富裕層の使用分がCO2放出の過…

旅がグンと楽になる7つの極意

最新の海外旅テクニック。ネットやスマホは積極的に利用。判断基準は楽になるかどうか。旅の本質には影響を与えない。伝説のバックパッカーもシニア層となり、スタイルは時代と自らの年齢に合わせているとのこと。文章は変わらず巧みで、こちらの旅心をくす…

ほんとうの豊かさってなんですか

「世界で一番貧しい大統領」として時の人であったウルグアイのムヒカ大統領。前半を対談、後半を池上氏の解説でまとめる。温和な人柄に見えるが、もともとテロ組織の闘士であり、長年の投獄も経験する。富の偏在、格差を憂い、政治による変革を求める。特に…

マチスのみかた

画家である著者のマチスへの想い。戦前のニースやパリで巨匠を訪ねた時の思い出が繰り返し語られる。マチスの制作はしっかりしたデッサンが基本でそこから余計なものをそぎ落とし簡略化していく手法。デッサンは何枚にもおよび、油彩に入ってからも書き直し…

ドーキンス博士が教える「世界の秘密」 

若者向け科学読本。本業の生物学から最新の分子物理、化学、天文学まで幅広く科学の基礎を解説。各章神話と実際の世界を対比させて平易に解説する。素晴らしいのはグラフィックでより理解が進む構成。9割がたは知識として常識の範囲だが、あらためて目を開か…

ガリレオの求職活動、ニュートンの家計簿

コペルニクスからニュートンまで、ルネッサンス以降の科学者の生活面に光を当てる。一言で言えば、パトロンの時代から近代的な研修組織への変遷。その偉大な科学的業績から、高邁な人格者であるように思われがちだが、それぞれに生々しい私生活がある。性格…

天才読書

マスク、ベゾス、ゲイツと言わずも知れた起業家にして成功モデル。彼らは稀代の読書家として知られる。それぞれが推薦する古今の名著を紹介。そのエッセンスを要約する。幅広いジャンルから選ばれているが、SF好き、歴史好きのところが共通点か。読んでみた…

モデルナ

コロナワクチンの開発、供給で一気に名を馳せたモデルナ社。数年前は弱小のバイオベンチャーであった。mRNAの開発で新規医薬品の開発を目指していたが、実績がなくその将来性には疑問符がつく。株価はIPO価格より下振れ。コロナ対応でウィルス開発にリソー…

フィリピンパブ嬢の経済学

著者は大学院生時代に、フィリピン出身のパブ嬢と巡り合い結婚。本編は続編で出産、子育てを中心に描く。ほとんど日本語がわからず、何事にも逡巡する妻。周囲のサポートもあり、逞しい母親に成長していく。そのうらで不法入国者たちの厳しい現実がレポート…

それからの帝国

著者のモスクワ留学時代の親友であるロジア人エリートの数奇な運命をたどるノンフィクション。学生時代は反体制運動に参加、ラトビアに逃れ独立運動をサポートするが、反政府主義者として、国外追放となる。現在はプーチンのブレーンとしてウクライナ侵攻を…

土を育てる

著者はアメリカの農業経営者。リジェネラティブ農法を実践し大きな成果を上げる。不耕起、無農薬、無肥料。要は生態系の力を活用し、これまでの工業化された農業とは一線を画す。学界とも協力し、データに基づいた科学的なアプローチである。光合成された炭…

2035年の世界地図

世界の知性と呼ばれる4人が、コロナパンデミック、ウクライナ侵攻で揺れ動く世界を展望する。副題にあるように民主主義と資本主義の未来。総じて楽観的で、一時的な後退はあるにせよ、終結後はグローバル化が進展すると予測。西欧的な見方がベースとなるが…

チャットGPTvs人類

何かと話題のチャットGPT,、生成AIに関するルポ。多数の記事やインタビューからの引用が多い。無敵の技術革新のように思われがちだが、未だ発展段階で功罪も多い。AI自身は判断機能を有しておらず、フェークを捏造、再生産する「幻覚」も例が多い。いずれに…

日本の進む道

対談。政治経済から教育、日本社会の特性まで幅広く議論。藻谷氏が問題提議をし、年長の養老氏が答える形で進む。二人とも「みんなで考える」=何も決まらない日本社会には辟易しており、2038年に予想される東南海地震での大変革を待つという皮肉な結論。日…

笑って人類

近未来SF大作。世界の大国とテロ組織の平和会議当日に、テロ組織の代表が自爆テロを敢行。残されたうら若き女性補佐官と日本の能無し首相があきらめず平和条約の締結に挑む。終盤にかけ、過去の謀略や経緯さらにはどんでん返しが明らかになってくる。未来の…

ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか

膠着状態となったウクライナ戦争の帰結をその原因分析から紐解く。この戦争は旧ソ連圏の再生を目指すロシアと西欧側への参加を目指すウクライナの互いのアイデンティティを賭けた闘いであり、妥協の余地は少ない。ロシアが開戦に踏み切った理由には、資源高…

カメラを止めて書きます

著者は在日朝鮮2世。映画監督として家族の歴史をドキュメンタリー作品に残す。父は朝鮮総連の幹部で自らの息子3人を帰国事業で北朝鮮に返す。母も気丈な人で子や孫に物資を送り続ける。これにより在北の一族はある意味豊かな生活を送れているようだ。映像作…

2035年の中国

著者は外交官。元中国大使。3期目に入った習近平体制を論評する。戦後の共産党政治は毛沢東、鄧小平の時代から、政治と経済の間でジグザグの歴史を繰り返してきた。習体制はどちらかと言えば政治寄りだが、経済の発展無くして体制は維持できない。民度の上…

シャープ再生への道

台湾鴻海の副社長から、シャープに乗り込み短期間で再生を達成した著者の自叙伝。大企業病に陥っていたシャープに大ナタを振るう。若い頃に日本に駐在。日本の生産管理方式を学ぶ。鴻海では中国の巨大工場をスピード感をもって創業。一躍経営陣に躍り出る。…

無神経の達人

著者によるコミュニケーション術。日本人特有の気遣いは全否定。無神経を武器に遠慮なく、相手との距離をぐんぐん詰める。国際経験も豊かで、言うべきことは主張しないと相手には伝わらない。見た目や役回りより知性派の一面も見せる。内容的には当たり前の…

橋下徹の研究

著者による橋下氏の弾劾書。ウクライナ紛争でロシア寄り、さらには中国寄りの発言を繰り返す橋本氏を批判。しつこいほどの攻撃的なツイッター投稿は確かに常軌を逸している。名誉毀損を恐れて明確には書いてないが、中国との関係を示唆。終盤では病的欠陥、…

災厄の絵画史

天災、戦争、疫病と人類を苛む惨事に向き合った画家たちを作品を通じて紹介。「怖い絵」シリーズの著者の得意とする分野。絵画史に精通し、歴史と社会背景を語る。文章は短め、図録は大判で一気に読めた。新書版では限界があるので名画はネットでチェック。…

見果てぬ王道

中国の革命の父、孫文とそれを支えた日本人実業家梅屋庄吉の交流を描く歴史小説。梅屋の方は正直あまり知られていない。長崎出身だが若い時から海外雄飛。写真館と映画興行で財をなす。欧米に虐げられるアジアの人民を救うべく、物心両面の援助を生涯続ける…

やっぱり食べに行こう

食に関するエッセイ。日本、世界各地を仕事で巡り、その土地土地に美味を発見。自らの思い出と共鳴させながら綴る。高級店は数少なくどちらかと言えば庶民感覚。取材旅行でパリ、スペインのネタが多い。毎日新聞日曜版への連載。軽妙な語り口はさすが。 やっ…

予言された世界

落合親子による共著。動転する世界情勢がテーマ。信彦氏はオバマ、トランプによるアメリカの劣化と、プーチン、習近平の独裁体制の領土拡大の野望から、世界大戦まで予想。陽一氏はネット世代による新しい価値観の創造を期待する。タイトルは父世代の予言が…