政治

足利義満消された日本国王

足利三代将軍義満の晩年に迫る。明と外交を通じ、日本国王の称号を受ける。これが天皇を蔑ろにした行為であると、皇国史観論者から批判の対象になる。著者は実力的にはむしろ、天皇家は眼中になく、東アジア全体を見据えた大きな構想を持っていたのではない…

ゼレンスキーの真実

ウクライナの大統領ゼレンスキーの実像に迫る。ルポ。原書はフランス系メディアでロシアの侵攻半年後の出版。ユダヤ系の家計に生まれ、演劇の世界に。ロシア側との繋がりは深い。大統領に当選した直後は未熟さも目立ったが、次第にリーダシップを発揮、何よ…

うえから京都

関西を舞台とした地方自治政治小説。現代坂本龍馬こと高知県の職員坂本龍子が、京都府の依頼を受け、交渉を担当、まず大阪、兵庫を説き伏せ連合を組む。目指すは東京の首都機能の分散化。必ずしも仲の良くない府県の利害を一致させ、東京都の交渉に臨む。関…

JAPAN TRANSFORMATION

楽天三木谷氏の率いる新経済連盟。デジタル企業のトップが日本の未来のために提言、活動を行う。錚々のメンバーだけに発言力は大きい。本書は結成から10年を機に現時点での問題意識を対談形式で世に問う形。徹底した規制改革と人材の流動化。後者には移民…

撤退戦

近代戦史の中から9例を精査。最も困難を極める撤退戦の成功と失敗の実例を考察する。どうしても組織の各レベルで判断は遅れがちで状況を悪くする。筋の通った命令系統が必要。現場は正確な状況報告、トップ側は部下を慮ることなく冷徹な判断が求められる。…

円安が日本を滅ぼす

タイトルの円安は現在の話ではなく、日本が凋落を始めた90年代。躍進する中国との競争のために円安を誘導し、製造業をそのままの姿で生きながらえてしまった。本来やるべきは韓国や台湾のように技術を高度化し、世界との水平分業を確立すること。近い将来日…

中国減速の深層

元日銀マンで中国専門家の著者が、巨大経済の行方を予測する。人口動態と先進国の罠から成長の減速は避けられないが、政府が目標とする2035年のGDP2倍の達成は微妙なところ。デジタル化、カーボンニュートラル、不動産、金融にもリスクはあるが、中国政府は…

トランプ信者潜入一年

2020年のアメリカ大統領選挙を現地で潜入取材。ミシガン州でトランプ陣営のボランティアとして活動。市民権はもちろん身分証明も不要で採用されるところは驚く。支持者はやがて信者となるが、都合の悪いニュースはすべてフェイクで片付け、自らを利する情報…

民王シベリアの陰謀

コミカル政治エンタメの続編。シベリアの凍土で発見されたウィルスが日本で蔓延。政府は対策に奔走する。主人公である首相ジュニアが問題解決に挑む。結局、利益を求めた海外資本の陰謀だったことが判り勧善懲悪。策動された反対勢力には真っ向から会話の力…

習近平帝国の暗号2035

習近平政権の内情と目指す姿を描く。著者は日経記者で北京駐在。ちょうど5年前の党大会。2期目を目指す人事抗争。腐敗撲滅を武器に軍部を含めた反対勢力を無力化していく。経済発展と軍備拡張により2035年に米国を凌駕することが野望。そのために今は雌伏…

黛家の兄弟

舞台は江戸中期の架空の小藩。家老の息子として生まれた三兄弟。末弟は大目付の家に婿入り。遊び人の次男が次席家老との権力争いに巻き込まれ、切腹させられることになる。十数年を経て再燃する政争に、見事な策略で挑む。ここまで白黒をつけるとは想定以上…

さよなら野口健

不思議な縁で結ばれた二人の男の生き様を描くノンフィクション。まずはアルピニスト野口健。日本とエジプトの混血で両親は離婚。来日後はいじめにあう。最年少で七大陸の最高峰を制覇。登山家としては3.5流であるが、その着想力と実現力で名を成す。代表…

自衛隊最高幹部が語る台湾有事

台湾有事を想定したシュミレーション結果と、その結果を受けて元幕僚長の座談会。中国の攻勢はサイバー空間を初めとするグレーゾーンから開始され、尖閣や先島諸島も攻撃対象となり、自衛隊は2方面作戦を強いられる。もう一つの課題が住民の避難。中国在留…

和らぎの国

女帝推古天皇を主人公とする時代小説。皇族の後継争いと豪族間の権力闘争が繰り返される飛鳥の時代。女性でありながら政治感覚に長けた皇太后が皇位を継承する。聖徳太子と竹田皇子の補佐を受けながら、和を重視し大和を文明国へ変身させる。内政では蘇我馬…

西郷南洲遺訓

西郷翁の遺訓を収集。ほぼ漢文でしかも旧字体。素養に乏しい身には厳しい一冊だが、書き下し文と編者の解説でなんとか読破、正確な理解には程遠いが、高邁な理想と愛すべき人柄は感じられる。史実に影響されている部分も事実。読むべき名著に記された一冊。…

人口減少社会のデザイン

すでに到来している人口減少。持続可能な社会の維持のための対策が急務である。AIによるシュミュレーション結果から、多極集中による地方分散が好ましい。理想とするのは欧州の地方都市コミュニィティモデル。日本は経済成長がすべて解決するという幻想から…

地球の未来のために僕が決断したこと

言わずと知れた大物が、地球温暖化対策を解説し、提言する。技術屋らしく原因の分析から入り、必要な要素技術とその関連、活用まで言及。経営者として経済的な数値も詳しく示す。最終的には政治の調整力が必要だが、その部分は踏み込めず理想論。長年貧困対…

タイムズ

朝日新聞への連載時評。執筆時の動機、その後の展開を併せて構成。東京五輪を機に日本社会の実相を深くえぐる。途中からコロナによる混乱、五輪は延期といっそう低迷と分断に拍車がかかった。立ち位置は左寄りのシニカルだが、事実を見極めようとするジャー…

新世界秩序と日本の未来

対談。この二人はシリーズ化しておりすでに3作目とのこと。米中日の直近の政治状況と近未来の予想がテーマ。自由と平等の間で分裂が進むアメリカ。少子高齢化を見越して国力ピークを迎える中国。国益より権力維持に奔走する日本。指摘はなかなか手厳しい。…

ハイブリッド戦争

副題にあるようにロシアの最新の国家戦略を、テクノロジーと地政学的な戦略から解説する。サイバー攻撃とハードパワーにより、民意を有利に導き、軍事力と結合させるハイブリッド戦略。クリミア併合と米大統領選で成果を上げる。正確な評価は証拠が残らない…

経済成長なき幸福国家論

対談。長期的な人口減少により日本経済の下り坂傾向は避けようがない。藻谷氏は人口動静を論じる。一般の認識とことなり東京は急激に高齢化が進む。高齢者の絶対数が多い。平田氏はユニークな活動をする地方自治体を紹介する。首長により面白い取り組みは現…

民主主義とは何か

何かと騒がしい民主主義の本質をその歴史を紐解き解説する。ギリシャで誕生し、ヨーロッパへ継承され、アメリカで更なる発展を遂げる。2500年を歴史があるが、普遍化したのはここ200年。常に批判にさらされてきた。直接参加から代議制へ、職業政治家…

プリンス

ミャンマーをモデルにした政治小説。軍事政権に反対する民主化運動の指導者は、大統領選挙のために帰国するが、空港で暗殺される。妻と息子がそれぞれ立候補を目指す。米英の大国の思惑、軍部内の派閥抗争と複雑な構図の中で一気に選挙へ。結局は民主主義の…

金正恩と金与正

北朝鮮の独裁政権の実情をルポ。3代目の正恩はカリスマ性が歴代に比べて劣り、相次ぐ失策や健康問題もあり権威の低下が認められる。妹の与正は出たがりの性格だが、一族のスペアの息を出ない。実際には赤色貴族と呼ばれる特権階層が支配する。彼らにとって…

知徳国家のリーダーシップ

対談によるリーダー論。明治維新と戦後の歴史から優れたリーダー像として八人を挙げる。共通性は知的バーバリアン(野蛮人)。北岡氏が政治を野中氏が経済を担当。評価が高いのが大久保利通と中曽根康弘。大きな国家像をビジョンとして持ち、強引に見える手…

令和の国防

陸海空の自衛隊OBが座談会の形で、日本の国防の問題点を憂う。最大の課題は拡大進出する中国対策。台湾進攻は現実のものになりつつあると危機感をあおる。シビリアンコントロールが前提だがより明確な国家戦略上の立ち位置が必要。現状認識の前半は刺激的だ…

プロイセン王家12の物語

ドイツプロイセン王家の盛衰を簡潔に紐解く。地方の豪族からプロセインを統一、さらにドイツ皇帝まで。各代に特徴はあるが名前がだぶるのであだ名で呼ばれる。歴史上評価が高いのは3代フリードリヒ2世(大王)と8代同三世(われらがフリッツ、老王)、後…

魂の発電所

原発事故の被害を受けた福島県飯館村。今もなお帰還困難地域が残り、住民の多くは被爆を恐れ戻らない。地元の有志が立ち上げた再生エネ発電。休耕地には太陽発電を、猪苗代水系には小型水力発電を設置し、原発からの脱却を目指す。立ちはだかる幾つの障害を…

テレビが伝えない国際ニュースの真相

予備校の人気講師による最新世界情勢の解説書。Q&A形式で簡潔に解説する。米中あたりはほぼ既知の事実が多いが、中東情勢になると知らぬことが多く興味深い。立ち位置少し右寄りのリアリスト。トランプ、安倍政権には一定の評価。強権の習近平には危惧を表す…

上野駅公園口

上野公園に住むホームレスが主人公。加賀からの移住組の子孫で、福島県相馬では極貧。長年出稼ぎで家計を支えるが、息子と奥さんを先に無くす。残された家族のために老境になり家出を敢行。上野で厳しい余生を暮らす。対比として示されるのが皇室の幸せな姿…