2015-01-01から1年間の記事一覧

原爆投下

太平洋戦争中の日本の諜報活動は優秀で、コールサインの解析からテニアンの爆撃部隊の動向はほぼ正確に把握していた。特に2度目となる長崎では迎撃や避難が行えたのではないかとの疑問。現場は優秀であるが、中枢はメンツや政略により機能しない日本の官僚…

ブラックオアホワイト

ストーリテラーによる夢譚。漱石の夢十夜へのオマージュか。エリート商社マンが各地で経験した不思議な経験。白枕は良い夢を黒枕は悪夢を呼び寄せる。実ビジネスや社内競争とも織り込んで展開される。著者の得意な中国や戦前の南洋が舞台となる。流石の出来…

地方消滅

元岩手県知事による衝撃の書。確度の高い人口動向データより地方社会の消滅を予言する。出生率ではなく若年女性の絶対数より、厳しい現実を明らかにする。地方ではすでに高齢者もその数を減らしており、平均の10年先の現象が見られる。東京は極点化してお…

天空の救命室

自衛隊に新設された軌道衛生隊が舞台。輸送機に医療ユニットを積み、広域で患者を搬送する。厳しいパイロットと新米医官の組み合わせ。搬送任務を通じて互いの交流、成長が描かれる。後半はそれぞれのロマンスも絡めて、最後はタイでの誘拐事件。盛りだくさ…

江ノ電10Kmの奇跡

現役社長が鉄道人生を語る。鉄道一家で育ち、土木工学を専攻。小田急では保線、設備を担当。駅の近代化など大型プロジェクトを担当する。箱根登山鉄道、江ノ電の社長を歴任。江ノ電では停滞していた経営を刷新する。常に優先するのはお客様の目線。人口減少…

かわいい自分には旅をさせよ

自伝的エッセイ。短編をひとつ掲載。生い立ちから自衛隊生活、作家デビュー現在に至るまでの来し方を、作品を絡めて記載。ユーモラスな文体でありながら、きっちり主張を織り込むところは流石。両親の離婚から、早熟な読書家に。は自然と作家になるものだと…

撤退戦の研究

共著。半対談の形を取り、第二次大戦での日本の軍部、政治の失敗を研究。半藤氏が歴史的側面を江坂氏が経営的視点から分析を行う。過去にもかなり研究され、私自身も知っている事実が大半だが、新たな視点も明らかにされる。日本は人口減少と金融ビックバン…

一両列車のゆるり旅

青春18キップを使って全国のローカル線を旅する。地方交通線はどこも経営は厳しく、通学の高校生と鉄道マニアを除いては閑散としている。一両編成のディーゼル車。もうひとつのキーワードが駅前旅館。こちらも時代と隔絶し衰退する運命。吹雪の宗谷本線が…

自分を大きく変える偉人たち100の言葉

古今東西の金言に著者が独自の解釈を加える構成。コーチング技術によりエフィカシー(自己効力感)を高めることが基本原理。従来の価値観にこだわらず、自分で自分のゴールをセットしそこを目標に生きることを若い読者に推奨する。かなり独善的だが納得出来…

天衣無縫

羽衣伝説を題材にした人情小説。羽衣を盗賊に奪われた天女が、偶然知り合った男と賊を追って江戸に向かう。男は押し込み強盗に家族を惨殺された菓子職人。やがて二人の間に不思議な恋愛感情が生まれていく。途中で結末は見えたが、まあ普通に楽しめるレベル…

技術大国幻想の終わり

閉塞感に満ち先の見えない日本を現況を解析。将来への改革案を提示する。戦後の偉大な成功体験を捨て去り、新たな価値観を導入する必要があると主張。人口減少はむしろ歓迎し、安全、安心を中心とした価値から新たな産業を産むべし。技術と発想を常に進化す…

公器の幻影

臓器移植を素材にしたフィクション。主人公は新聞社の記者。海外への渡航移植を批判した記事から、遅れていた法改正が進むことになるが、献金絡みの不正を摘発したこと で、結果として廃案になってしまう。記者の目を通して、移植を待つ患者や家族、脳死を受…

雨に泣いてる

大震災直後の全国紙が舞台。一匹狼の主人公は阪神での経験が買われて宮城班のキャップになる。壮絶な現地でも取材をもとに次々と署名記事を送る。現地で不明になった社主の孫娘である新人記者を探し当て、反発しあいながらも記事魂を発揮。後半は過去の殺人…

危機を突破する力。

著者の最新作。これまでのキャリアを振り返りながら、読書の重要性を説く。特に日本の衰退は知的衰退を主因とする沈黙の螺旋にあり、正当な批判が封印される危険性を指摘する。解決には教育改革しかなく具体的には国費留学生を提案。自己の信念に忠実で、戦…

低欲望社会

著者の最新時評。現代の若者の内向き、下向き、後ろ向き思考を打破する方策を探る。アベノミクスは事実上崩壊。ハイパーインフレを予見する。長期的には教育改革。中期には自治体によるプロジェクト起業。複数エンジン化を提唱。連載だけにテーマはあちこち…

無私の日本人

江戸時代の市井に生きた尊敬すべき人物3名を取り上げる。一般には無名だがそれぞれ偉業を成し遂げた。後書きにあるように「ほんの少しでも濁ったものを清らかに変える浄化の力をもった人」がテーマ。3話ともそれだけで充分長編となりうる題材。著者は歴史…

ポッキーはなぜフランス人に愛されるのか

日本の菓子業界の海外展開をルポする。人口減少の中、市場を求めて海外へ活路を求める。嗜好の世界だけに一筋ならでは行かない。現地化のローカライズとコスト対策のため、現地生産が必要。これまでの代理店頼りではなく、自らマーケティングを手掛ける。担…

モノづくりで幸せになれる会社となれない会社

下請け企業からの脱皮に成功した18事例を紹介。共通するのは国内空洞化による需要の減少と親社との不等な関係。新たな研究開発により自社製品、サービスを作り上げる。容易ではないが社長のイニシアチブで旧弊を脱皮。著者のうち坂本教授は取りまとめのみ…

幕末マラソン侍

幕末の小藩。黒船来航を機に藩士の体力強化のため遠足が行われる。殿様の鶴の一声で始まった大騒ぎに藩士の思いは様々。5部からなる連作の形を取るが、それぞれが繋がりラストを迎える構成。面白く読めたが、ラストは少し盛り上げすぎで全体のバランスを欠…

変身する組織へ贈る世代交代ストーリー

著者は中小メーカーの2代目。創業者である父親の急逝で30歳で後継者となる。ブラウン管の検査機メーカーであったが、将来性が無く大転換を図る。まず経営理念の明確化からはじめ、ビジョンへと展開していく。実業では苦闘の結果包装用樹脂のシュリンク機械…

常識外の一手

天才棋士として若くして各タイトルを制覇。現在は将棋連盟の会長と現役棋士の2足の草鞋を履く。どうしても協会の仕事が多くなるのはトップの宿命。話題となったコンピューターとの対決に頁を割く。議論はあったが将棋ファンの裾野を拡げるため必要と判断。…

アイリスオーヤマ一目瞭然の経営術

躍進著しいアイリスオーヤマの経営手法を紹介。プラスチックの成型業からスタート。ホームセンター向けの独自商品開発で日本一のメーカーベンダーとなる。LEDの大衆化で飛躍。徹底しているのはユーザーインの姿勢。営業マンやパートの販売員までが、末端の顧…

僕らはまだ世界を1ミリも知らない

学生時代に起業し成功した著者は、思い立って世界一周の旅に出る。まずフィリピンで英語修行。東回りで2年間世界を巡る。ネットを駆使してカウチシェアにドライブシャア。積極的に人にふれあうことでさまざまな体験をする。旅の目的はどこへ行くかより誰に…

永田鉄山昭和陸軍運命の男

陸軍の至宝と言われた永田鉄山の伝記。統制派の巨魁で惨殺事件で憤死したというイメージしか一般にはないが、キャリアと実績を丹念にたどることでその実像にせまる。徹底した合理主義者であり、改革は憲法下で行うべしと主張。軍紀の引き締めに挑むが関東軍…

中の人などいない

著者はNHKK広報室でツイッターを開始。NHKらしからぬゆるいつぶやきで評判となる。SCNに関しては素人ですべてが試行錯誤。内外から批判もあびたが、自分の信じるところを貫く。圧巻は大震災。自らの判断で情報提供に動き、数日後からは従来の癒し系…

問題解決ラボ

売れっ子工業デザイナーによるエッセイ集。家具や商品から企業イメージのトータルコーディネートまで幅広くデザインを手がける。扱うプロジェクトは常に300件程度。デザイナーの基本としては情報、アイディアの整理、伝達、ひらめきが3要素。前者2つは…

寺院消滅

現代日本仏教の危機に関するルポ。地方の衰退に伴い無住となっている寺院は多く、この先は加速度的に増加する。現在の葬式仏教に関して若い世代ほど関心は低く、宗教では無くビジネス化する可能性もある。歴史的には廃仏毀釈と農地解放で痛めつけられ、商業…

筆談ホステス

幼少の頃の発病で聴力を失った筆者。普通校では落ちこぼれ、本人は意識がないが不良、問題児に。高校は中退。アルバイトで接客のおもしろさを知り、やがて水商売に。巧みな筆談で評判になり、青森から上京、銀座で勤める。かなりはっきりした強い性格。両親…

知らないと危ない会社の裏ルール

著者は保険会社の人事部に所属。伝統的な日本企業の雇用、人事問題を解説する。典型的なタテ型のムラ社会であり、不文律と慣習が組織を支配している。個人のパフォーマンスより、和を尊びチームの構成員となることが重視される。出世の条件は上司の望む枠内…

決戦大阪城

歴史作家競作の第二弾は大阪冬の陣、夏の陣。それぞれ人物を取り上げそこに視点を据えて描く手法は前作に同じ。いずれも秀頼をひとかどの人物と定め、家康には時間が無くかなり無理をしたという説を取る。関ヶ原から比べていずれも代替わりしているところが…