学術

時間は存在しない

理論物理学者による科学エッセイ。最新物理学の世界では時間も空間も存在しないとのこと。おそらく量子力学、素粒子レベルでの認識。著者自身も自らの生活実感とのギャップについて言及している。前半の相対性理論のところは何とかついていったが、後半はさ…

月まで3キロ

短編集。表題作を含め6篇+おまけ。どれもいい。理系の出身らしく、科学的知識を背景に家族の姿を描く。厳しい現実に直面するが、ラストは希望を与えるほのぼの系。著者の作品は初めてだが、少し読み込んでみたい。新田次郎賞受賞作。 月まで三キロ(新潮文…

ビジネスパーソンのための言語技術超入門

著者が長年取り組んできた言語技術教育。ドイツで育ちの日本人として語学の差でなく、思考法の違いに苦しむ。主語が明確でなく理由から記述する日本語の特異性。開発した教育法は質問を連続的に発する問答ゲームによる対話。文章ではパラグラフの構造教育。…

DXとは何か

学界の大御所がDXを平易に解説する。技術的なことよりコンセプトや社会にもたらすインパクトについて頁を割く。繰り返されるのは何事も絶対的な正解はなく「程度の問題」。最適な解を目指して社会の妥協と納得が必要。日本は保守的で抵抗が強く、欧米やアジ…

始まりの木

大学の民俗学教室。毒舌の准教授と女子院生のペアが、日本各地をフィールドワークでめぐる。失われていく日本独自の神性とその信仰。目的を持った学問の重み。知的で軽妙なやりとりで愉しませつつ、重厚なテーマに正面から挑む。待望の新シリーズ。良い出来…

読まなくてもいい本の読書案内

最新の社会、自然科学の進化を豊富な読書から抜粋する。章立てのテーマは、複雑系、進化論、ゲーム理論、脳科学、功利主義。ベースとなるのは進化論でこれに最近の統計学、コンピューターが進歩を加速させた。若者向けにかなりかみ砕いて書かれているが、概…

大仏師運慶

運慶の美術史的価値を再評価する一冊。鎌倉時代の仏像は工房の作品であり、一般のイメージと異なり、プロデユーサーとしてとらえる。朝廷と幕府の二十構造の中で、両方から受注を受け、慶派を率い発展させたところも高評価。美術としては現代西洋美術の価値…

天才富永仲基

江戸時代、大阪の町人学者である富永仲吉の業績をその著作からたどる。数多の仏典を読破し、その関係性を解明する。時代に先駆けて「加上」の概念を導入。先達の哲学に新たな要素を加えていくこと。これにより経典の時代の変遷を明らかにする。国学者には仏…

予測学

著者は数理学者。予測学という学域があるわけではないが、幅広い分野で数理モデルが応用されている実例を紹介。意外と簡単なモデルで事象は説明できる。ビックデータやAIの応用で予測精度が向上しているようだ。平易な解説で読みやすい入門書となっているが…

サコ学長日本を語る

著者はアフリカ、マリの出身。中国へ留学、日本に興味を持ち、京大で建築を学ぶ。日本人と結婚、国籍を取得。京都精華大学で教鞭を取り、現在は学長。濃厚なアフリカ社会から見ると、日本は画一的で平淡。他人を気遣うあまり、本音をぶつけあい衝突を避ける…

宇宙に行くことは地球を知ること

異色の取りあわせによる対談。宇宙大好きの矢野顕子が、3回目の宇宙に臨む野口聡一の経験や人生観、哲学を引き出す。宇宙体験は基本的に引き算の世界。重力も空気もない無の世界で、地球の奇跡を感じられる。また帰還後は燃え尽き症候群でメンタルを病む飛…

海馬の尻尾

長編悪役小説。主人公のやくざは粗暴でアル中。良心の呵責を感じない。精神科医の診療を受けると脳の一部に欠陥があることが判明する。抗争の雲隠れに8週間の改善プログラムに参加。そこは国家プロジェクトがPTSDを改善する薬品を開発する秘密実験病棟あっ…

その犬の名を誰も知らない

南極観測史上誰もが知るタロウ、ジロウの物語。実はもう一匹、第3の犬がいた。第一次越冬隊の唯一の生き残りで、当時の犬係である北村氏の記憶をたどるノンフィクション。当時の犬ぞりによる冒険は迫力十分。犬たちのサバイバルについては、50年の時を超…

世界の神様解剖図鑑

タイトル通り、世界中の神話の世界をイラストつきで解説する。日本、インド、ギリシャ、北欧がメイン。一神教の世界には存在しない分野。強調されるのは共通性。これはよく言われるところ。入門書として網羅的だが、一部の雑学の域を出ない。何かあったら調…

絶滅の人類史

猿人類から現在の我々まで。人類の進化を科学的に辿る。700万年の間に多くの種が発生し絶命していった。生物考古学的な論争は数多いが大体の道筋は明らか。2足歩行の人類は、大きな脳を持つことができ、食物を運搬、共同社会で子育てをし、厳しい競争を生き…

バッタを倒しにアフリカへ

昆虫学者を目指すポスドクが、アフリカモーリタニアでフィールドワーク。大量発生するバッタのメカニズムを探り、撲滅へのヒントを探る。異文化の中での研究生活の実態が面白おかしく描かれる。京大の白眉研究者に選ばれるなどユニークで優秀なのだが、肝心…

経済学を味わう

東大経済学部の教授陣が、教養生向けに行った講義がベース。最新の経済学のエッセンスが専門別に解説される。マクロ/ミクロから会計/ファイナンスまで。内容構成、難易度も様々。数式が入ると途端に難しくなるのは仕方ないところ。経済学の本来の目的は社…

人の名前が出てこなくなったときに読む本

自覚しているが、名前が出てこないのは認知症の初期症状。脳は着実に老化している証。大敵は糖尿病と高血圧症。対策は運動と食事の順番。何よりも実践と継続を強く推奨。シンプルな内容であるが、意識して気をつけたい。 健康長寿の医者が教える 人の名前が…

覚悟の磨き方

副題にあるように吉田松陰の著作を現代訳し、テーマごとに構成。繰り返されるのは学問と同時に、実行を伴うこと。弟子を友人として扱う熱く優しい人柄も垣間見え、短期間に多くの人材を育てたのもうなずける。やや訳が平易に過ぎるような気もするがそこは意…

めんそーれ化学

沖縄の夜間中学での化学事業。わかりやすい実験で化学の基礎を教える。生徒はおばあたち。戦争体験を含む日常の経験を話し出すと止まらないが、これがまた興味深い。逆に教えられること多数。人生経験の豊かな人々からの伝承は大切な財産である。ジュニア向…

とんでもなく役に立つ数学

東大教授で渋滞学の権威である著者が、高校一年生を対象に数学の面白さを講義する。難しい数式を使わず、微積分の概念とモデリングで概念を解説。実社会への貢献とフィードバックまで興味を呼ぶ内容となっている。特に専門分野である渋滞に関する問題解決手…

いかにして問題をとくか実践活用編

数学教育の重鎮である著者が、ボリアの名著の精神を平易に解説。高等数学を使わずわかりやすい例題で数学的な論理思考を展開する。基本となる問題の理解、計画立案、実行、ふり返りはまさにPDCAサイクル。技術立国日本にとっていかに数学教育が重要であるか…

環境負荷

同一エネルギーを得るためのCO2発生量石炭=1.0とすると 石油=0.58 天然ガス=0.44H(水素)に比率が多くなれば、その燃焼エネルギー分が寄与する。

日本のノーベル化学賞(復習メモ)

福井謙一 量子力学からアプローチした「フロンティア理論」(有機化学反応理論) 「応用化学を専攻とするなら基礎をやれ」が恩師の言葉 白川英樹 導電プラスチック(ポリアセチレン) (研究生がチグラーナッタ触媒を通常の1000倍投入して合成。) 野依…