2019-01-01から1年間の記事一覧

お金2.0

2.0とは既存1.0に対して新しい世界観を象徴する。著者が予測するのは価値主義。ネット上での評価がお金に取って変わる社会。確かに若い世代にとって金の持つ価値自体が低減していることは理解できる。前半の導入部はやや退屈だが、後半に刺激的で説得…

82年生まれキムジョン

韓国のフェミニズム小説。82年生まれの主人公は男尊女卑の社会の中で、生まれ成長し、結婚、出産する。親世代とは急速に改善方向にあるものの、社会の反感も根深い。最後は精神に異常をきたす。女性同士は互いに名字を知らないことも多いとのこと。本作で…

村上海賊の娘

歴史長編。戦国時代の海賊王村上武吉の娘が主人公。父の資質を最も引き継いだヒロインが木津川海戦に臨む。戦いの悲惨さに一度は引きこもるが、本願寺に残して来た信徒を想い、再び鬼手として水軍を渦中に巻き込む。周囲の登場人物はみな史実上の実在人物。…

知ってはいけない現代史の正体

独自の視点、史観から現代史を論じる。すべてはユダヤ財閥の陰謀だとする極論。彼らの目的は国家単位を超えたグローバリズム。これが正だとすると為政者は自国民を犠牲にしてまで、陰の政府に尽くしたことになり、にわかに信じがたい。トランプはその闇の力…

人生の諸問題五十路越え

都立小石川高校、早稲田大学と同級生の二人の放談。すでに還暦を超え、来し方を振り返る。コラムニスト、広告マンとしてそれぞれ豪放な生き方。江戸っ子としての矜持もある。豊島区、北区の争いも面白い。清野氏のつっこみもなかなか。世代として少し上だが…

オムライス日和

続編。新宿近くの横町にある。BAR追分。そこに巣くう主人公は物書きの修行中。商店街の管理人として地域の世話をする。4篇からなる本書は彼の周囲におきる些細な事件から人の触れ合いを描く。登場人物はそれぞれ事情を抱えながら皆良い人でほのぼの感あふれ…

防衛大式最強の仕事

著者は防大卒の経営コンサル。本書は防大での厳しい教育を実社会で活かす経験が主題。厳しさに新入生は100人単位でやめるという。基本は逆算志向の目的達成方式。極めてシンプルでロジカルである。明確な上下関係の中で繰り返し基本を叩きこまれ人材は育…

真実の終わり

警告の書である。ポストモダニズムとITの発展により、客観的な事実報道が伝わらない時代になっている。これを利用しているのがトランプ政権とプーチン。巧みな情報操作はナチスやスターリンを思い起こさせる。対策は各個人が耳障りの良い情報だけでなか、幅…

栄光のノーサイド

戦前の豪州で活躍した日系人ラガーマンの物語。全豪代表にまで選ばれた才能の持ち主。戦争に巻き込まれ、日本軍の捕虜となる。収容所長の世界を旅する陸軍大尉が経験者で親睦試合を開催。このあたりはフィクション。最後は輸送船が撃沈され仲間を救いながら…

永遠のPL学園

高校野球の名門校が突然の廃部。著者は2年間野球部に密着しその真相をルポ。教団の広告塔としての役割を終え、代替わりにより不要とされたようだ。教団自身も信者数が減り経営は苦しい。野球部は軍隊式の厳しさで全寮制の合宿。上級生による暴力事件が相次…

日本の優れたサービス2

続編。第2回のサービス大賞の受賞企業を紹介。その成功要因を解説する。本書のテーマは「壁に向かう勇気」。如何にして全社員を巻き込んで改革のムーブメントを拡げ維持していくか。各ステップで成功体験が必要となる。前回と同じく顧客の事前期待を正確に…

世界地図を読み直す

著者は学際から、国連大使、JICA理事長を歴任、日本外交の重責を負う。主としてJICAから各国を訪問。日頃縁遠い国々の実情を紹介する。現地での活動を視察し今後の日本の取るべき道を考察する。結論は西洋と異なる独自に歴史に基づき、その近代化と途上国へ…

なぜテーマパークでは朝から風船を売っているのか

著者はTDLとUSJで勤務。その後コンサルとして独立。テーマパークへのアドバイスと同時にその経営手法を活かした社員研修も実施。本書もそのコースを経験することで、パークの内情、戦略とその一般社会への適用を説く。内容的には平易で常識の範囲を超えるも…

新海誠の世界を旅する

著者はアニメ研究家。君の名はで大ヒットした新海監督の来し方を解説。自主制作から始め、今日のメジャーに化けた。丁寧な作画とモノローグによる男女の機微は底通するテーマ。作品ごとに聖地を生むが、濃淡は差がある。初期作品を観てみたい。 新海誠の世界…

仕事選びのアートとサイエンス

転職による仕事論。自らの経験から語るのは広告代理店とコンサルティングファーム。どちらもハードワークだが求められる資質と成果は異なる。変化の激しい時代に転職には肯定的だが、全体の論調は慎重論。豊富な読書量からの引用も多い。美術関係の記述はほ…

科学する心

著者による科学エッセイ。もともと理系の学生だったとのことで感覚は高い。多くの関連書籍を紹介して引用。生物、博物誌関係のネタが多い。人知がコントロールできない原発には厳しい。予想に反してやや硬めの文章。 科学する心 作者: 池澤夏樹 出版社/メー…

虎とバット

著者はアメリカの社会学者。阪神タイガースをフィールドワークの対象にした1冊。球団とそれを取り巻く世界をスポーツワールドと位置付け、詳細な解析を行う。得られた結論は日本社会の縮図であるソープオペラと関西の東京に対する対抗心が人気の源泉。いわ…

のび太の月面探検記

最新映画の原作本。辻村氏が脚本を担当したとのことで手に取った。月を舞台にする少年たちの友情物語。映画を先に観ていたのでストーリーは完全に把握していたので、驚きは少ない。もちろん愉しめるレベルの作品。 小説「映画 ドラえもん のび太の月面探査記…

負けるな届け

アラフィフでリストラにあった主人公。知人の応援に駆り出された東京マラソン。全力で応援する姿に触発され、自らもフルマラソンに挑むことに。舞台はボルドー。ワインとグルメを楽しみながら、制限オーバーながら完走。館山では友人やなんと敵役まで応援す…

三度目の日本

著者の遺作。日本の3度の危機。幕末、敗戦、平成。抜け出すには価値観の変化を伴う革命が必要。天下泰平の江戸時代から、殖産興業、富国強兵の戦前へ。平和主義、経済成長の戦後期は完全に行き詰まり、価値観の大転換が望まれる。唱えるのは楽しい国家。第…

フランス人がときめいた日本の美術館

フランス人女性による日本の美術館ガイド、東京、京都に加えて地方も紹介。ジャンルも幅広く網羅。古典から現代美術まで審美眼は確かなものがある。感性は日本人に近いがやはり現代的。本来の目的であるガイドとして手元に置きたい一冊。 -朝倉家住宅 -河合…

自衛隊の闇組織

自衛隊に存在する諜報機関。大臣、内閣には報告せず、シビリアンコントロール上大きな問題である。旧中野学校の系統を引く。著者は共同通信の記者として長年の取材でスクープをものにする。他社は追随せず、また機密保護法の成立後となったので敗北感が大き…

肖像彫刻家

主人公は売れない彫刻家。イタリアで磨いた腕は確かだが、芸術の域には届かず、親の遺産とバイトで食いつなぐ日々。とあるころから彼の作るブロンズ像にはモデルの魂が宿り、不思議な現象を引き起こす。作者の得意なモチーフではあるが、本作はコミカル仕立…

僕たちは宇宙のことぜんぜんわからない

最新の宇宙物理学の案内書。数式はほとんどなく軽い記述とユニークなイラストで笑わせる。結論的にはいまだわからないことだらけであるが、科学の進歩はめざましくやがて解明されていくであろうとの希望。宇宙に存在するブラックマテリアルや膨張のエネルギ…

なぜ日本の当たり前に世界は熱狂するのか

「もののあわれ」や「わびさび」に代表されるように日本文化が世界で再評価されている。その原因はSNSによる世界の村化に日本の均質的で中庸な社会がFITしていると分析。明治維新や戦後に西洋的な価値観を追い求めてきた日本人自らが再考する必要がある。根…

経済学なんて教科書だけでわかるかボケ

著者による経済学入門書。非常に卑近な例を多用して、シンプルに解説。大いに脱線しながら笑いを取る手法。内容的には基本的な事項ばかりであるが、復習確認には丁度良いか。アベノミクスの評価は中立。インドネタとアイドルネタが多い。 経済学なんて教科書…

愛加那と西郷

奄美大島の島妻として西郷を支えた愛加那。史実をベースにしながら二人の情愛を細やかに描くところが著者の真骨頂。出会いから数度にわたる別れ。二人の子供も薩摩に送り出す。彼女や子供への想いがあったればこそ、西郷は不遇を乗り越え歴史に名を遺した。…

娘に語るお父さんの歴史

1963年生まれの父親が自らの子供時代を娘に語る。普段の想い出話ではなく、しっかり図書館で調べ、時代背景と歴史上の意義を諭す。高度成長の真っただ中、テレビが家庭に入りスピードに価値のあった時代。人間の幸せは突き詰めれば自分の子供のために未…

なぜ男子は突然草食化したのか

著者自ら統計探偵を名乗る。豊富なデータを解析し、社会現象を解き明かす。マスコミでは伝えられない深層が見えて非常に興味深い。センセーショナルなタイトルだが、中身は極めてアカデミック。それぞれに自らの結論を明示するのも好感。注目したい。 なぜ、…

理系の企画力

企画開発について9つの法則を上げる。優良企業の成功事例の具体例をあげ理解を深める構成。サントリーの伊右衛門やコマツのダントツなど良く知られた事例。目新しいのは安川電機の「外専内標」。2009年版なので、少し危惧したがあまり古さは感じなかっ…