2012-01-01から1年間の記事一覧

警察庁長官を撃った男

時効が成立した國松長官狙撃事件。誰もがオウムの犯行と信じているが、これは公安の思いこみによる捜査、報道によるもので真犯人は別にいた。東大中退の単独テロリスト。銀行強盗で服役中だが事実と合致する自白をしている。起訴しないこと自体が警察組織が…

そして消費者だけが残った

テレビ東京、カンブリア宮殿での対談修。第3巻は2007-2008年頃の収録放送分。リーマンショックの大不況で各社苦しい中で、独自性を出した優良企業の経営者の発言は重く、また的を得ている。表題の通り日本の消費市場に目を向けたサービス、食品関係の比率が…

ドビッシー展

ブリジストン美術館で開催中。作曲家と関係のある芸術の流れを追う構成だが、ややわかりにくい。オルセーから印象派を中心に名品が来ていた。ドニの作品が多い。目を引いたのはあまり知られてない画家の作品。このところ数を観ているのでさすがに印象派にも…

武器としての決断思考

京大での講義をまとめた一冊。ディベートの基本を応用して決断への論理的な道筋を説く。根底にあるのは不確実な時代に若者は自らの生き方を決断して行かなければならないという想い。手法としては議論の焦点を賛否のでるものに絞り、検討の上どちらかを選択…

ハッピーリタイアメント

完全なリタイヤ役人天国の天下り機関に送り込まれたノンキャリアの二人が、ボスの愛人である女性職員と組んで反乱を起こす。安住な飼い殺しを良しとせず、残りの人生をかけて正しい道を楽しむ。失うもののない者の強み。全編キャラが立ち、ユーモアとペーソ…

火天の城

安土城築城の総棟梁が主人公。熱田の宮大工が信長の要求に応え大プロジェクトを完工する。六角の妨害。他一門との確執。反目する跡取り息子と人間ドラマも充分に盛り込む。自身が最善の努力をすれば、後はトラブルに細かい心配をしないとの悟りの境地は現在…

ともにがんばりましょう

関西の地方紙が舞台。強引な形で組合の教宣委員を押しつけられた主人公が秋季一時金交渉の中で会社との交渉、支部ごとの調整に振り回されながら人間的に成長していく。新聞社という特殊な環境下であるが、右肩下がりの経済状況の中で、年末金の削減と労働強…

太閤暗殺

追い詰められた関白秀次側近による太閤暗殺計画。迷いながらも石川五右衛門一味に暗殺を依頼。石田三成、前田玄以陣営と激しい攻防を繰り広げる。練りに練った五右衛門の計略で事は成就したかに見えたが、最後のどんでん返しは予想外だがややとってつけたよ…

人は自分が期待するほど、自分を見ていてはくれないが、がっかりするほど見ていなくはない。

共著第2談。見城氏が自分の人生観、人生訓を語るのに対し、藤田氏が私見を返信する形式。常に戦闘的で前向きな見城氏と、冷静で客観的な藤田氏の主張がかみ合い面白い。世代を超えて卓越したビジネスリーダーとしてお互い尊敬していることがひしひしと伝わ…

デパートへ行こう

深夜の老舗デパート。自殺死亡の男、復讐を企てる元社長愛人の女子社員、父親が贈収賄事件に絡んだ高校生の家出カップルが、同じ夜に偶然店内に忍び込む。合併がからんだ会社の派閥争い。店を想う老警備員と脇役、プロットとも重厚。ありえない偶然が引きお…

オイアウエ漂流記

トンガ近海で搭乗機が遭難。乗り合わせた日本人が無人島に漂着する。会社の上下関係とスポンサーの御曹司との関係を残したまま、生きるためのサバイバルが始まる。お決まりの男女関係あり、旧日本兵の地方老人、環境保護団体の不良外人ありで、さまざまな人…

孫正義記紀克服の極意

ソフトバンクの後継者育成塾であるアカデミアの講義のエッセンス。過去、現在、未来に渡り危機管理の基本を解説する。突き詰めれば哲学がベースにあり、問題を考え抜き即断する。ソフトバンクの最大の危機は後継者問題だと明言する。原発、エネルギー問題に…

一人の哀しみは世界の終わりに匹敵する

連作。女子校を舞台に少女の成長を通じて聖書の奇蹟を物語る。平易な文体であるが、ある程度の聖書の知識がないと理解は深くならない。正直、私は著者の主題に届かなかった。評価は分かれるだろう。一人の哀しみは世界の終わりに匹敵する作者: 鹿島田真希出…

苦役列車

芥川賞受賞の私小説。性犯罪者を父に持ち、将来への夢を持てず自暴自棄な生活を送る主人公。日雇いの荷役作業で食いつなぐ。同じ職場で親しくなった学生との交友が孤独を癒すが、強引な個性が悪さをして疎遠になる。小説の創作への想いが独自の古風な文体で…

おいで一緒に行こう

福島原発事故により立ち入り禁止になった20キロ圏内に残された犬猫を救うボランティアグループ。ある意味非合法な活動であるが作者は密着取材し、実名で雑誌に掲載した。活動家に共通するのは40歳の女性。キーワードは母性。動物たちにとって過酷な環境…

信長死すべし

本能寺もの。信長の横暴に危機感を抱いた正親町天皇から光秀に密勅が出ていたとするストーリー。朝廷への敬意を持つ光秀には断ることは出来ず謀反に及ぶ。この設定には説得力がある。ただし証拠は残さぬように公家達は巧妙に立ちふるまった。事なった後に天…

日曜日部長は牧師になる。

25年の長きにわたり、サラリーマンと伝道者の2足のわらじを履いてきた著者の自叙伝。普通の企業人と変わらぬ悩みを吐露し、聖書を引用することで自分なりの解を示す。退職にあたっては疎外感をもつなど正直な告白はなかなかできないことだ。積水、交野教…

辺境中毒

エッセイと対談と書評。寄せ集めの感はぬぐえない。ミャンマーのケシ栽培の村で生活し、弟の結婚式のために急きょタイ経由で帰国するまでの顛末がが前半のやま。後半は対談とノンフィクションを中心として書評。提唱する「エンタメノンフ」はいまひとつ浸透…

ルーズヴェルトゲーム

不況に苦しむ電子材料メーカー。創業者の肝いりで作られたノンプロチームだが存続の危機に見舞われる。チームの再建と買収工作にさらされた企業の生き残りが同時進行で描かれる。結末は予定調和のハッピーエンドだが、誰もが愛してやまない自社のチームとグ…

女流阿房列車

表題の通り内田百聞と宮脇俊三へのオマージュ。小説新潮の鉄道特集へ掲載されたシリーズもの。女子乗り鉄である著者が過酷な企画に挑戦する。東京地下鉄を一日で完乗したり、こだまを乗り継いで博多までと、マニア企画の中で女性らしい別の視点を提供する。…

大人の流儀

エッセイ集。あまり形式張らず著書の生き様や矜持を語る。ギャンブルや酒にまつわる逸話が多いが、日本人が失いつつある人付き合いの常識すなわち礼節も示される。悪ぶる態度と荒ぶる文体は少しも憎めず、男として格好いい生き方である。巻末に亡妻である夏…

いかにして問題をとくか実践活用編

数学教育の重鎮である著者が、ボリアの名著の精神を平易に解説。高等数学を使わずわかりやすい例題で数学的な論理思考を展開する。基本となる問題の理解、計画立案、実行、ふり返りはまさにPDCAサイクル。技術立国日本にとっていかに数学教育が重要であるか…

仕事ができる社員できない社員

若手社員にいかに必要とされる人材になるかを示す。繰り返されるのがデットラインの設定による時間管理。緊急度、重要度に加えて徹底度のファクターを入れて組織改革を図る。管理者としてはいかに権限委譲を進めるか。上司ではなく仕事が部下を育てる。内容…

恋する空港

あぽやん2の副題が示す通りの続編。旅行代理店の成田支店が舞台。主人公は一段成長し、部下を教育する立場に。親会社=日航のリストラのため支店自体が閉鎖の方向にあるが、いかに次代に残せる仕事をするかが主題。どたばたの中でしっかりもののセンダーと…

グッゲンハイム美術館

仕事の明けた午後は地下鉄でグッゲンハイム美術館へ。結構な人出。リニューアルなったようで自慢の回廊で抽象画を堪能。別室の印象派のコレクションはさすがのレベル。機体のカディンスキーは前回も観た内容でもうひとつの印象。2日目の時差のためかすぐに…

絶頂美術館

人気シリーズの美術解説書。今回はエロスに焦点をあてる。キリスト教の教義が厳しい時代から画家たちは、神話に名を借りてヌードを描いて来た。日常の裸体を描いたマネが非難されたのは肯ける。印象派の敵されているサロン画家、新古典主義を評価する。全体…

セカイ系とは何か

「エヴァ」後のサブカルチャー批評。いわゆるオタク文化は「エヴァ」を境に変質。難解で批判の多いエヴァの後半部分を若者の自意識を探求した文学的な価値として再評価。その後セカイとカタカナで表する自己と世界との独自の関係を構築した若者カルチャー。…

受け月

短編集。主題は野球と家族。いずれも一線を退いた男たちが哀愁を漂わせながら、一心に白球を追いかけていたころに想いをはせる。それがまた現実社会での困難に立ち向かう勇気を与える。支える女たちや家族も暖かい。無頼派で名をなす著者だが、本書では心温…

ロズウェルなんか知らない

スキー場に撤退され青色吐息の過疎の村が、観光客誘致のためトンデモ手法で「四次元魔境」として村おこしをはかる。首謀者は東京から流れてきたクリエーターと実は中年の青年団の幹部。動かない役場や頑迷な老人たちの反対を受けながら、一時は成功を見るが…

理科系の作文技術

書名そのままではあるが、若手の研究者への論文作法である。以下に論理的にかつ正確に自らの研究内容を伝えるか、そのすべてが網羅されている。一般に日本人の文書は受け身を多用することで曖昧さが多く、修飾語を多用することで逆茂木構造になると手厳しい…