2008-01-01から1年間の記事一覧

YouTube民主主義

著者は元毎日新聞の特派員。コロンビア大学の聴講生として数ヶ月滞在したNYで見聞きした最新情報。ネットの影響力により様変わりする選挙情勢、社会を冷静で客観的な立場から解説する。アメリカの歴史、政官界、市民心理まで熟知した著者ならではの視点に関…

のぼうの城

「のぼう」は「でくのぼう」である。領民からは様付けで親しまれている。普段は茫洋としてつかみどころの無い男だが、居城が小田原攻めの秀吉軍に囲まれてからは、比類無き将器を見せる。結局本城が落ちるまで唯一下らなかった誉れある最後の関東武士の一族…

地頭力を鍛える

「じとう」でなく「じあたま」である。要は思考能力の地肩を作りましょうとのこと。知的能力を3次元軸にとると、従来の「知」力はネット検索のコピペ文化で意味をなさなくなりつつある。これからは「理」での問題解決力と「情」による対人力が重要になる。…

決定学の法則

ビジネスでも個人生活でもあらゆる局面で迫られる決断。そのメカニズムを工学的に解明し、最善の決断を得る手法を解説する。自著「失敗学」が「逆演算」であるのに対して「決定学」は「順演算」であり、表裏一体の関係にあるとする。内容は多彩な図表を駆使…

大雨の週末

1220018309*[美術]コロー展 金曜日の美術鑑賞。閉幕直前でようやく観ることが出来た。混雑はまあ想定の範囲内。ルーブルからの出品が多い。風景画、人物画とも綺麗である。完成された形式美なのだがやはり面白みにかける。参考出品された印象派のピサロやド…

のんびり山陰本線で行こう。

初老の著者が京都から下関へ旅する。677キロの鉄路を自らの会社人生になぞらえ、来し方を振り返る。主な観光地を網羅し、旅情をかき立てようとするが、もうひとつ。鉄道関係に集中した方がいいのでは。唯一興味を引いたのは石見銀山。ローカル線の廃止、…

オンリィイエスタディ

ヤクザに雇われた中年のスケコマシが主人公という珍しい設定のハードボイルド。自慢のテクニックを用いて秘密を聞き出すべき女性に振り回されるうちに、最後には彼女を守るため自分の人生にけりをつける強さを見せる。背景は政治家の汚職をめぐる証拠書類を…

TEST MATCH

日本ラクビー界の至宝と呼ばれた著者の手記。ラガーにとってもっとも重要であるテストマッチ、そこで勝利をえるための道筋が進行形で熱く淡々と語られる。歴史的なスコットランド戦の勝利、ワールドカップでの初勝利と数々の栄光をもたらした陰には、徹底し…

アンナGO

先天性の障害により運動能力にハンディを負った少女が、愛犬のラブラドールに癒され心身ともに成長していく。最後は共に出場したストリームの競技会で見事完走、入賞する。犬の持つ潜在能力、子どもの持つ成長への意欲が融合した奇跡。両親の共著で交互に自…

人類の星の時間

柳田邦夫氏の著書で引用されていたのがきっかけ。人類歴史を大きく転換させる運命的な瞬間を描く。戦争、革命から芸術にまでいたる12のエピソード。初版は1927年。革命、共産主義への共感がみられる。時代のせいか翻訳のせいか表現が固くやや読みにくい。 海…

世紀のラブレター

明治以降の著名人が書いたラブレターを集めたもの。皇族、軍人、政治家、文壇と幅広く収拾。男性は意外と心を許した相手には自分をさらけ出すのに対し、女性は人生観から大きく外れない。もともと裏表がないということか。同性の告白はなんだか気恥ずかしい…

さよならバースディ

チンパンジーより知能が高い猿の一種ボノボ。類人猿に言語を教え、使わせる研究プロジェクトの関係者に不可解な死亡事故が続く。謎解きより人と猿の関係。欲望渦巻く大学の陰湿な人間関係。研究と自然の調和が描かれる。自殺した恋人からコンピューターとボ…

逆転

企業もの短編集。産経新聞に読みきりで掲載されたので各編は非常に短い。バブル後の企業の合理化とそれに対抗する団塊の世代というのが基本テーマ。作者の身代わりである企業弁護士が、社員に有利な解決策を示す。工夫は見られるがどれも似たような設定で全…

お龍

坂本龍馬の奔走をハチンキな妻お龍の視点から描く。よく知られた史実よりと共に龍馬の没後の恵まれない後生が主題。勝ち気な性格が災いして坂本家や海援隊からは邪険にされるが、唯一の理解者である呉服屋の主人には妾としてではあるが、愛されたことは精神…

新幹線ガール

アルバイトからパーサーとなり、売り上げ一位を獲得した著者のエッセイ。成功の秘訣は常に相手の立場で考える接客業の基本。確か一乗客としてはに昔の売り子からアテンダントとしての気遣いは感じる。茶髪禁止の厳しいドレスコード、徹底した教育等、楽屋ネ…

嫁にいくから旅に出た

嫁入り前の記念に、バックパッカーの旅に出る著者の旅行記。ヨーロッパからアフリカ、中東、南米と第三世界を巡る。サハラ砂漠でテント暮らしをしたり、ボリビアでゼネストに遭遇したりと、なかなかの題材。本人も認めているように感動に筆が追いついていな…

心理経済学

日本経済が長期低迷から脱出するには、1500兆円の個人資産に仕事をさせ、新たなフローを産み出し、消費を促進するしかない。日本社会は「集団IQ」の低さから、保守的であるため、パラダイム転換を図る必要がある。政治、経済でのヒーロー出現が待たれる…

オヤジの細道

厄年を迎えた著者が「夕刊フジ」に連載したエッセイ。当然ながら読者をふまえユーモアあふれた軽妙なものになっている。世代的には全く同一であるので共感出来る部分はきわめて多い。肥満、老眼、若者や子供との世代断絶などステレオタイプのネタなのだが、…

科学の扉をノックする

ド文系の著者が、各界の碩学を訪問し最先端科学をレポートする構成。天文学、鉱物学から解剖学まで、主として自然科学の分野。これは一見実用とは遠い基礎科学にスポットをあてようとする編集方針による。内容は研究成果そのものの解説は平易で万人向けのレ…

巨人軍に葬られた男たち

期待の左腕として高校生ながらドラフト1位で入団した湯口敏彦。重圧につぶされ精神を病み、最期は謎の急死を遂げる。本書はその真相を追ったルポ。ただ直接の死因についてははっきりと触れられておらず、謎のまま終わる。球団の事情から型にはめ一日もはやく…

「気づきの」の力

「新潮45]に連載の評論集。テーマは得意とする医療からテロ、環境、教育、地方問題と幅広い。鋭い着眼点と真摯な提言は健在。一連のシリーズの第1作となった「壊れる日本人」と比べると多少論点が拡散した感は否めない。 「人類の星の時間」ツヴァイク 「ル…

直感力

歴史作家のエッセイ。副題は「カリスマの条件」。予想通り信長、秀吉や勝海舟などの言動から、現代に通ずるのリーダー論を展開する。ネタとしてはすでによく知られたものがほとんどであまり目新しいはものはなし。簡潔な要約と文体である。直感力―カリスマの…

風の帰る場所

宮崎駿が渋谷陽一のインタビューを受け、自らの仕事の語る。「ナウシカ」のコミック版が底流にあり、一連のアニメとの中で微妙なバランスを取っていたという下りはうなずける。自分の体調の悪さもあるが、対談を編集無く全文掲載されているだけに、やや読み…

ワイルドソウル

戦後南米への移民政策はまさに棄民であった。未開の土地へ放り出された1世たちは、まさに野蛮人なみの生活を強いられ、次々命を落としていく。数奇な運命の上でなんとか生き残った2世が、日本政府に対して壮大な復讐を計画する。外務省ビルへの乱射と元凶…

ポスト資本主義社会

1993年の著作であるが、その近未来予測の正確さには改めて舌を巻く。近代資本主義が成熟し、我々は時代の大きな変革点に臨んでいるとする。来るべき社会は「知価社会」。本文に対する自らの注釈がアクセントになり読みやすい構成になっている。引用多数。 テ…

天璋院と和宮

幕末の徳川将軍家に薩摩と皇室から嫁いだ女性二人。下世話に言えば嫁姑の関係になる。いずれも聡明で優しい女性であるが、政略結婚の思惑と取り巻く忠義の女中たちにより関係はしっくりこない。最後の局面で二人の尽力により徳川家は取りつぶしから救われた…

先端巨大科学で探る地球

4人の共著。先端科学をかいま見ようと挑んだが内容は予想以上に高度。入門書的な書かれているのだろうが専門用語も多く、門外漢には敷居が高い。掘削探査はマントルに到達しようとしている。日本主導の技術の成果に期待。 掘削科学 探査船「地球」 海底観測…

プレカリアート

今や社会問題化しているネットカフェ問題について、フリーターサイドからの告発の書。不況対策として企業が行った雇用の弾力化は、若者の1/3が正規の職につけないという異様な状況を産み出している。これは格差社会を超え貧困問題であるとする。グッドウィル…

佐伯祐三展

県立美術館で開催中の「佐伯祐三展」を鑑賞。地方美術館の開催の割には優品が集められていた。年代順に30年の短い生涯を追う構成。パリ、風景画、文字というイメージがある画家であり、その通りのの風景が圧倒的に多い中で、人物、静物を描いたものに迫力あ…

フランスが夢見た日本

副題は「陶器に写した北斎、広重」。日本で刊行された花鳥風物をそのまま洋食器に絵付けされた作品集。オルセーの収蔵品から。こちらは表慶館で。実は密かに期待していったのだが、やや外れた印象。特にルソー工房のものは銅版転写による量産品のイメージ。…