東京のぼる坂くだる坂

幼い時に自分と母を残して家を出た父。転居を繰り返し名のある坂に住むというこだわりの変人。中年を迎えた主人公がその坂を訪ね、父との関係と隠された家族の謎を探る構成。一応家族関係が主題だが、むしろ東京の坂道のガイドブック的な要素が強い。そこに歴史があり生活がある。当然ながら人生の縮図としての暗喩も存在する。王子稲荷など近場も紹介されている。いくつかは訪ねてみたくなるような一冊。