ピカソは本当に偉いのか

類い希な才能とカリスマ性で現代美術の王として君臨するピカソの本質に迫る。同時に著者の現代美術史観を論じる。ピカソは周到な交渉術により画商を引き込み、嫉妬をあおることで女性遍歴を重ねた。本書の冒頭に示される問いに対する答えとしては、ピカソは画家としては巧くその芸術性は抜きんでている。ただし経済的な評価としては、アメリカ資本主義の勃興に絵画ビジネスが取り込まれたことは否定できないとする。ベースとして19世紀の転換点は二つあり、第一に主要な発表の場が美術館となり、教会や王権のための「美の術」から画家が自らの芸術性を世に問う「美の学」に変質したこと。第二にダーヴィンの進化論により変化が好意的に受け取られるようになったこと。ピカソはまさにその時期の革命児としてデビューした。中盤の議論がやや退屈であったが結論は明解。図版がモノクロなのが惜しまれる。

ピカソは本当に偉いのか? (新潮新書)

ピカソは本当に偉いのか? (新潮新書)