2014-01-01から1年間の記事一覧

完盗オンサイト

世界的なクライマーが皇居に忍び込み、盆栽を盗むと云フ奇想天外な設定。プロットや動機には無理があるが、展開が早くまあ楽しめた。代わりに子供を置いて来てマスコミに失踪した母親を公開捜査させるあたりは読めなかった。乱歩賞を受賞。今後に期待。完盗…

小森谷くんが決めたこと

平凡な青年がモデルの青春小説。幼稚園の先生への初恋に始まり、成長とともに数限りない失恋を重ねる。高校時代は悪友に誘われ、小悪な生活。大学卒業後はアルバイト生活。ようやく念願の映画関係の仕事に就けたと思ったら、悪性リンパ腫を発症。辛い抗癌剤…

波風

短編集。少し生活に疲れた男女の機微を描く。決して豊かではないどこにでもある庶民の生活。それぞれ事情を抱え、過去に拘泥しながらも生きていく男女。その中でも新しい出会いがあり、家族をつなぐ情愛がある。総じてレベルは高いが結婚前夜に姉弟が育ての…

一分で一生の信頼を勝ち取る方法

著者は元NHKアナウンサーで現在はスピーチコンサルタント。NHKで学んだ話し方と心理学を組み合わせ、政治家等にスピーチ術をアドバイスする。本書の内容は不特定多数を相手の演説や講演が主目的だが、テクニカルな部分は共通。あまりサプライズは無し…

サラは銀の涙を探しに

天才将棋少女サラの物語の続編、タイトル戦を前に失踪したサラ。対戦相手であるヒロイン七海と指導者である鍵谷はその行先をネット上の痕跡に探る。女性としての成長が天才的なひらめきを消し去ったとの結論。一方で二人はコンピューターとの対戦に勢力をか…

サムソン式仕事の流儀

入社5年目までの社員を対象に、サムソングループで求められる資質と能力。実際の仕事の進め方を説く。意外と当たり前のことばかりで、サプライズはなかった。日本でも優秀な社員は実践していることが大多数を占める。ただ上意下達の縦社会。徹底したスピー…

春の庭

現代の東京郊外住宅街のアパートが舞台。近所にある元有名人の一軒家に憧れる独身の中年女性。「春の庭」と題した写真集に載った住居の内部が見たくて仕方がない。この不思議な住人と関わりを持った主人公を語り部に物語は進む。大きな展開があるわけでなく…

電子立国はなぜ凋落したか

80年代に半導体シェアの8割を占めた日本勢の凋落の真因を探る。根底には東西冷戦終結による、アメリカの政策転換があるが、日本メーカーも垂直統合にこだわり、真のイノベーションであるファブレス&ファウンダリーへの水平分業の機会を逃した。日本語と…

春風伝

春風とは高杉晋作の諱。その生涯を克明に描いた大作。抜群の着想力と人を惹きつける魅力で早くからリーダーとして認められ、上層部にに温存されて来た。何度も脱藩を繰り返しながら、許され長州藩の危機になると重用される。詩文の才能も豊かで多くの漢詩が…

悟浄出立

短編集。中国歴史上の脇役に焦点を当て、その生き様、人生観を浮き彫りにする。エピソードはもちろん作者の創造の産物であるが、一般読者の知識と離れない絶妙のバランス。絶頂の人気作家の面目躍如。項羽と虞美人。司馬遷と娘の2品が良い。着想に脱帽。悟…

ダヴィンチ封印

フィレンツェのヴェッキオ宮殿の壁画をダ・ヴィンチが製作していたのは歴史的事実。その下絵となる板絵が本作の題名であるダヴォラドーリア。真贋は確定していない。主題の解明、すなわちマキャベリやフィレンツェの共和制。メディチ家との争いは興味深いが…

マリアージュマリアージュ

短編集。現代に生きる男女の恋愛がテーマ。一見華やかだがいずれも必ずしも幸福ではない。各編衝撃的な事実が明らかにされるラストが待っているが、あまり記憶に残らないのは共感を持てないからだろう。独特の文体による心象描写は評価。 マリアージュ・マリ…

IKEAモデル

元社長による経営書。スエーデンのオーナー企業であるが明確なビジョン設定でグローバルな成長を遂げたIKEA。中間層にターゲットを絞り、コストパフォーマンスのよい商品群を展開する。コストダウン分は価格に反映して拡販につなげる。10年スパンによる長…

ぼくの守る星

言語障害を持つ少年とその家族の物語。普通学級に通うが成長するにつれて次第に精神論や理想論ではどうにもならない現実の壁につきあたる。一方で弟の障害で母親が精神を病んだ少女は自殺を考えるほど思い悩む。二人の交流純愛を通して未来への希望を描いて…

本能寺の変431年目の真実

明智光秀の子孫である著者が、歴史捜査と称して本能寺の変の謎に迫る。手法は徹底した文献調査。信長、秀吉、光秀、家康とそれぞれの思惑で複雑にからみあったシナリオを仮説として立てそれを立証していくプロセスはスリリング。自論に有利な材料を集めた感…

マレーシア航空機はなぜ消えた

乗員、乗客と共に消息を絶ったMH便の謎に迫る。限られた情報で作者がたどり着いた結論は、機長によるハイジャック説。背景には機長の遠縁であるアンワル元副首相絡みの政治劇がある。長時間の飛行中にマレーシア政府と交渉を行い、要求が通らず最後は自爆…

二千七百の夏と冬

ダム工事現場から発掘されたカップルの古代人の人骨。縄文原住民の少年と弥生渡来人の少女の出会いと純愛。文化の遷移期特に米作文化の導入期を舞台に物語は展開される。巨大なヒグマとの執拗な戦い。異文化の出会いによる軋轢と争い。底流には日本人のルー…

ダヴィンチの最後の晩餐はなぜ傑作か

キリスト教にまつわる西洋絵画を、聖書の物語からひもとき解説する。アダムとイブの原罪、受胎告知さらに最後の晩餐といった題材が時代により、画家によりどう描かれて来たかが、豊富な図像とともにわかりやすく語られる。文化センターの講演が元ネタとのこ…

ゼロの迎撃

北朝鮮と中国の共謀テロが東京を襲う。台風に乗じて隅田川の堤防を決壊させるという身近な設定。立ち向かうは情報管の三佐をトップとする僅か4人の敵。官僚制と法規制という内部の敵とも戦うことになる。むしろこちらが主題。決断力のある首相の存在が救い…

京都ぐるぐる案内

京都を舞台とする著者の作品からの引用と写真から構成される。百万遍や吉田山と言った京大周辺の穴場が多数紹介される。古都の持つ独特で不思議な雰囲気を愉しめる軽めの案内本という位置づけ。森見登美彦の京都ぐるぐる案内 (新潮文庫)作者: 森見登美彦出版…

嗤う名医

医療ミステリー短編集。ある程度の立場にある中堅の医師が主人公。職業上の悩みや激務から来るストレスがテーマとなる。現実にありそうな設定で読む側を楽しませる。嗤う名医作者: 久坂部羊出版社/メーカー: 集英社発売日: 2014/02/26メディア: 単行本この商…

推定驚異

小松基地に配備された新型練習戦闘機(TF)で不可解な墜落事件が相次ぐ。メーカーの女性技術者であるヒロインは、元社員であるフリーのデザイナーと協力して問題の真相に迫る。積極的な好奇心の発露と持ち前の騒がしさで現場に溶け込み問題を解決に導く。最後…

艦これ

人気ゲームのノベライズ小説。他愛ないの一言。日本海軍の軍艦をキャラ化しているネトゲの雰囲気は理解できた。艦隊これくしょん ‐艦これ‐ とある鎮守府の一日 (角川スニーカー文庫)作者: 椎出啓,鷹見一幸,銅大,こるり,「艦これ」運営鎮守府出版社/メーカー:…

小説外務省

外務省の若手官僚を主人公に副題にあるとおり尖閣問題の正体に迫る。現在の外務省はアメリカンスクールが主要人事を独占しており、自主外交とはほど遠くアメリカのいいなり状態。中国とは国交回復時に尖閣問題は棚上げしていたはずなのに、国有化により自ら…

[書評]青い約束

高校時代のボクシング部の親友。恋人の自殺を機に疎遠になっていたが、30を過ぎ経済部記者とアナリストとして再会する。肝臓ガンで死を覚悟した記者の手記で過去の秘密が明らかとなる。言わばオーソドックスな青春小説。社会の歯車として自分を曲げない姿…

ミッション建国

主人公である保守与党の青年局長(モデルは小泉ジュニア?)が若手議員の勉強会を立ち上げ、日本の未来への政策を提言する。キーは少子化対策、老齢化対策、一次産業回帰による地方活性。ハコモノ投資ではなく、若い世代の巣(ネスト)となる住宅投資を提案…

消費をやめる

経済論評。欧米型の消費社会を批判。戦後ニッポンの歴史は「労働」から「消費」の時代への転換であったとする。高度成長期から刷り込まれた欧米への憧れが、経済戦争での敗戦という今日の低迷を招いたとし、商店街や銭湯に代表される日本型コミュニティーへ…

原発ホワイトアウト

現役の経産省官僚が小説仕立てで原発に絡む政財界の暗部を暴く。独占企業である電力会社は自民党政権の集金マシーンとして機能し、癒着により政治力を発揮する。反対勢力は知事であれ、マスコミであれ国家権力を駆使して排除。原発の再稼働に漕ぎ着けるが、…

大絵画展

バブル期に日本企業が買いあさった名画。現在では銀行の担保として回収され専用倉庫に眠る。国際的な詐欺強盗集団がこれに挑む。実行犯に選ばれたのはそれぞれの事情で借金に苦しむ男女。彼ら自身も実は騙された立場。背景には絵画に翻弄された主人公達の矜…

ポニーテール

両親の再婚により姉妹となった小学生の二人。気の強い6年生の姉と気を遣い泣き虫の妹。徐々に距離を縮めてお互いを認め合う。両親も新しい子供達に戸惑いながら、新しい家族を築く物語。基本的に妹の視点で語られるが、時に亡き母親が語り部になる。ほのぼ…