池上彰の世界の見方北欧

北欧4国の国事情。厳しい環境と列強の間にはさまれて独自の政治、文化の路線を歩む。税負担は高いが、高福祉、教育重視は少ない人口で生き抜くための合理的な選択。日本が見習うべき制度も多い。中学校での授業にしては内容のレベルは高い。シリーズを遡る形で読破。

 

-フィンランド 枢軸国として敗戦、賠償金負担、教育大国

-スェーデン  工業国、軍事産業、かっての大国

-デンマーク  酪農王国、かっての大国だが肥沃な南をドイツに割譲

-ノルウェー  漁業国、EU非加盟、NATOには加盟、

-アイスランド 漁業国、EU非加盟、地熱発電

 

 

 

 

オードリーヘップバーンの言葉

伝説の女優の発言を抽出し、彼女の人生を追う。1929年生まれ、ナチスの時代を生き抜き、バレリーナを目指すが、身長が高すぎて断念。本人はやせぎすの体形にコンプレックスを持っていたようだ。ローマの休日で銀幕デビュー。その後の活躍は知られている通り。2度の結婚と離婚。仕事よりも家庭を優先する。晩年はユニセフの親善大使として恵まれない子供たちにつくす。誰もに好かれる気品と筋の通った生き方。享年63歳は今の私と同じ。一気読み。

 

-自分には二つの手がある。ひとつは自分を支えるため、もう一つは誰かを助けるため。(サムレヴァンソン)

 

 

 

世界を驚かせたスクラム経営

2019年のラクビーワールドカップ日本大会。その舞台裏で運営に当たった人々のノンフィクション。強豪国以外では初めて、そしてアジアでの開催ということで前例がなく準備は遅々として進まない。国際組織からの要求は高く、そして上納金の義務。唯一の収入はチケット売り上げ。寄合所帯の組織はサイロの壁を突破できない。流れを変えたのは徹底したコミュニケーションと、「すべての参加者に一生に一度の舞台にする。という合言葉。開催後はトラブルに迅速に対応。台風による中止も混乱なく収めた。醸成された信頼関係の勝利。感動的な内容であるが、公式レポートのようでやや文章は硬い。

 

 

 

 

宮部みゆきがおすすめした本

読売新聞の書評欄。2015-2019年分。洋の東西を問わず小説からノンフィクションまで幅広い。美術関係も何冊か目を引く。少し古いが興味をひくタイトルは多数。図書館の予約が入り、急遽読破。

 

 

 

行為と妄想

碩学の履歴書。京都の商家出身。三高から京大へ。今西錦司の門下。生物学から民俗学へ。民俗学博物館の初代館長。知的生産の方法の著者としても名高い。学生時代は山岳部の猛者としてならし、アジア奥地を探検。フィールドワークを大事にする。驚かされるのはアグレッシブな活動と人脈の広さ。老年まで公私ともに忙しい日々を過ごす。内発的な動機に触発され、妄想と行為で彩られた人生。新聞連載がもとだが大幅に加筆。特に後半は網羅的で読みづらい。時代背景と気遣いももあるか。

 

 

 

 

 

漂流する日本企業

日本経済の失われた30年の原因とその対処法を説く。2度の金融危機により、銀行に依存できなくなった企業は、内部留保を高め積極投資を抑制した。一方で外圧によりガバナンスが流行りとなり、配当性向を高めた。直近では投資額より配当額が高い異常な状況となっている。いずれも確固たる経営原理を有しない日本企業の漂流。著者の主張である人本資本主義への回帰を強く訴える。成功例はキーエンス。投資を増やし、人を育てる。我々はそうやって育ててもらったのは事実。日本社会の質の高さがアドバンテージとなるか。短期間で書き上げたのは大家の危機感の顕れ。心したい。

 

 

 

成瀬は天下を取りに行く

滋賀、大津、膳所が舞台の青春小説。ヒロイン成瀬は型破りの天才少女。すべてに才能を発揮するが、周囲の評判は一切気にせず、独自の哲学で邁進する。同じマンションの親友が良いパートナーとなり、漫才コンビを組む。中学生から高校卒業までを描くが、恋愛色はあまりなく、清々しい読後感。R-18文学賞受賞作、ベストセラー化は頷ける。また新たな才能。