連作集。小さな旅館が舞台。戦前の蔵書からなる文庫があり、若女将が客の悩みに応じた一冊を推薦する。同じ匂いをかぎ分ける特殊能力のなせる技。全5編の前半は軽めだが、後半にかけて重みを増し、最終編は文庫の成り立ちまで遡る。それぞれの1冊があるが最終編は漱石の「こころ」。メルヘンチックな解決ではなく、人間の善悪の本質に迫るテーマ。なかなかの秀作である。思った以上の読み応え。
大ヒットした少年漫画5編を取り上げ、民俗学的な検証を行う。主人公ではなく脇役に焦点をあてる。いずれも原作を完全には読んでいないので今一つ理解が進まない。逆にマンガ自体がよく構成され、それは伝承文学にも通じていることに感心する。