2016-01-01から1年間の記事一覧

五能線物語

廃線をありえたローカル線を、屈指の観光路線として再生したサクセスストーリー。ボトムアップの提案から観光列車を走らせる。鍵は秋田新幹線の開業と地域との連携。JR秋田支社の改革プロジェクトAKITAWAYが見事に融和した。硬直した組織の中に、顧客優先の…

リベラルがうさんくさいのには理由がある

自らをリベラルな一般市民と称する著者が、マスコミや一部扇動家からなるエセリベラリストを批判する。まず沖縄での集団自決を取り上げ、軍部が主導したという刷り込みの事実を覆す。現在政治には大きな対立は存在せず、保守とリベラルの差異は「伝統」と「…

リーダー論

AKBの一期生で、チームキャプテンさらにグループの総監督を務めた著者のリーダー論。若干20歳のアイドルも組織を束ねる難しさは同じ。特に自信家の年頃の女の子は複雑であろう。目標が共有しやすいのが救いか。その手法は徹底したコミュニケーションで小集…

読書脳

文芸春秋に連載中の書評をまとめて掲載。2006-12年分。ノンフィクションを中心に幅広い読書対象。意外とジャンルは硬軟織り交ぜている。紹介する文章は巧みで読みたくなる書籍が多数だが、付箋をつけてみると近代史関係に偏ってしまった。巻頭に東大図書館副…

[書評}ぼくのメジャースプーン

言葉の力で他人をコントロールできる少年が主人公。クラスで飼っていたウサギが惨殺され、想いを寄せていた少女はPTSDで口が聞けなくなる。犯人との対決を控え、同じ能力を持つ親戚の大学教授とシュミレーションを行うが、この部分が長い。人を裁くことの意…

貴様いつまで女子でいるつもりだ問題

エッセイ。40代独身女性の心情を吐露する。男社会の中を葛藤を隠しながら、しなやかに生きてきた。結婚に憧れ女子の部分も隠さないが、現実は極めて快適な模様。そこは人生の選択。同時に両方は得られない。異性としては100%理解できないが、女性には共感を…

リタとマッサン

ニッカウイスキー創業者夫妻の物語。文庫書下ろし。前半はイギリス留学中に知り合ってから結婚までを。国際結婚に対する家族の反対を交えて描く。後半は日本での本格的な醸造を。当初サントリーの山崎を立ち上げたが、商業主義を優先する鳥井経営に満足でき…

仕事は8割捨てていい

著者は「インバスケット式」を推奨する経営コンサル。中小家具メーカーを舞台にストリー仕立てで自説を紹介。すべてにおいて物事を「必要」と「願望」に分け、後者を捨て去ることを強調。要は取捨選択。夢や理想を守るためには捨て去る勇気が必要。上位者ほ…

レイジ

バンド少年たちの青春小説。中学の同級生で性格の異なる二人がプロを目指してロックの道を行く。路線の違いからバンドを組んでは解散を繰り返し、大多数の人間がそうであるように夢破れ挫折を味わう。昔のオリジナル曲がTVのエンディングで使われ再誕を果た…

日本企業のグローバル戦略入門

大前塾での講演集。塾頭、LIXIL社長、椿教授の3本立て。いずれもプレゼン資料が示され非常にわかりやすい。特に地域選定に関する最後の1本が印象深い。人口動態から日本マーケットは縮小。最悪1/2に。海外での注目はインドとアフリカ。GDPから日本の過…

キリンビール高知支店の奇跡

半ば左遷のような形で高知支店長となった著者は、6年間でトップシェアを奪い返す。低迷の原因はスーパードライの攻勢もあるが、長年のトップシェアにあぐらをかいた組織の体質。まず意識改革から手をうけ、愚直に客廻りを増やすことから始める。背骨は明確…

日本史の謎は「地形」で解ける(文明文化篇)

好評シリーズの第2巻。土木工学者が地形と気象から、歴史の必然を推理する構成は前作と変わらず、今回も斬新な新説を提示する。論旨は明快で頷かせられることも多い。話があちこち飛ぶ傾向にあるのは著者も自覚しているようで、編集者は苦労しただろう。 徳…

イノベーションオブライフ

「イノベーションのジレンマ」で名高い著者によるハーバードビジネススクールでの卒業生に対する最終講義。経営理論を個人の人生に適用する。キャリアパス、家族、コンプライアンスの3章からなる。面白かったのは第一章。後半は宗教的な価値観が表に出て、…

リーダーの本義

著者のリーダー論。これまでの著作で取り上げた人物から共通点を紡ぐ。組織の本義を理解し、マニュアルの無い危機に際して本領を発揮することができるかが、評価の境目となる。自らの地位や名声さらに命さへ賭けることができれば、樹下は自ずから系をなす。…

自分思考

エッセイ集。評判となったバングラやネパールでの起業を綴った全2作の裏側。自らの思考形態や日々の過ごし方を率直に記す。表面は常にポジティブだが、内面は若い女性らしく悩みや葛藤を抱える。それを打ち破るのは0.001%でも前に行こうとする気持ち…

0から1の発想術

著者最新の経営啓蒙書。基礎編として11の実践編として4つの発想法を提示。時代に即して経営者には、大局をみすえる力と構想力が要求される。キーワードはデジタル大陸。IT化の流れを読み切る力が必要。明確な方向性を与えて専門家に任せることも一手。事…

生きるための選択

まさに命がけで北朝鮮から脱出した著者の自伝。父親の逮捕をきっかけに北で困窮。餓死者が出る飢饉と賄賂が横行する北の実態。中国のブローカーは人身売買。女性はレイプされた上に農家に嫁として売られる。モンゴル経由で韓国にたどりつくが、偏見とギャッ…

ロマンシエ

パリのリトグラフ工房icemが舞台。女性の心を持つ主人公の青年。執筆から逃れてきた人気作家が工房で出会う。作家を巡る編集者たちの争いと、青年の同級生へのかなわぬ恋がドタバタで描かれるが、主題は幾多の芸術家が愛したリトグラフと歴史ある工房のすば…

佐藤優さん神は本当に存在するのですか

プロテスタント神学と動物生理学の異色対談。究極のテーマは神の存在について。前半は佐藤が舵を取り、現代キリスト教における神の解釈について語る。後半は竹内女史得意の遺伝子談義。前半の神学的な議論の方が新鮮で興味深かった。当然明確な結論は出ず。…

半径5メートルの野望

ネットの世界では有名な若手女性ブロガー。若者向けの発信をまとめて一冊の本になった。暑苦しいほどの上昇志向で評価は分かれるだろうが、一本筋は通っている。フレーズでは引用したい者も。現在の夢はブロガーから作家への道を切り開くこと。後進のために…

韓流経営LINE

最近上場を果たしたが、謎多い企業であるLINEについてのリポート。韓国の検索大手であるNAVERを母体とするが、SNSについては自国で後れを取り、韓日国境で開発成功した。KFSは徹底した現地文化化。実業面では買収したライブドアの出身者が貢献した。グローバ…

総理にされた男

現職カリスマ総理のそっくりさんで売れない俳優の主人公が、重病の総理の影武者とされそのまま政治を執行する。政治には素人であるが持ち前の正義感と演技力で次々と難題に挑む。クライマックスは海外テロへの自衛隊特殊部隊の投入。圧倒的な国民の支持を得…

最強の経営者

アサヒビール唯一の名誉会長である樋口氏の経営をたどる。住友銀行から出向。夕日ビールと揶揄された当時の苦境から、キリンと覇を競うところまで急成長させる。スーパードライのヒットによるところが大きいが、巨大投資を実行しチャンスをつかみ取った決断…

気仙沼ニッティング

経営コンサルでブータン帰りの著者が、震災で甚大な被害を受けた気仙沼でベンチャーを立ち上げる。目指すのは日常のルーチン。職場があり、収入があり生活がある。4人の編み手という小規模でスタートしながら初年度から黒字を計上。納税で地域社会にも貢献…

自分を成長させる技術

ユニチャーム現社長である著者が人材育成術について語る。世界展開を図り急成長中であり、優秀な人材はいくらでも必要。具体策として日々の報告書を一新し、失敗を重要視してPDCAサイクルを廻す。目指す組織を「共振」と上下水平とも風通しの良い会社を企図…

午後には陽のあたる場所

著者の自伝。アイドルから結婚、出産。長女は障害を持ち教育に苦労する。子育ての傍ら大学院でキャリア形成論を修得。現在は母校の女子大で教壇にたつ。引っ込み事案の幼少期から、家族や周囲に支えられ自らが大きく成長。積極的に発言するようになる。特に…

ルカの方舟

理系ミステリー。火星隕石の発見で注目を浴びる大学の研究室。研究データ捏造の告発メールが舞い込む。渦中で相次ぐ殺人事件。人を喰った天才肌の研究者が探偵役。見事に謎を解いて見せる。背景には成果を求められ厳しい競争の中で報われない若き研究者たち…

ファミリーレス

家族を題材にした連作集。全6話だがそれぞれは完全に独立。ごくうすく登場人物で繋がる。少し複雑な家族の事情と人々の感情を淡々と描く。最終話が一番良いかな。著者の作品は初めてだが、なかなかの書き手。今後注目。ファミリー・レス作者: 奥田亜希子出…

なぜぼくが新国立競技場をつくるのか。

センセーショナルなタイトルだが、著者が戦後の日本建築史と自らの経歴を語る。強調されるのは現代の建築家はプロマネだということ。設計事務所やゼネコンとコーディネートし施工中もよりよき解を求め続ける。新競技場については素材として木をふんだんに使…

赤毛のアンナ

タイトル通り赤毛のアンへのオマージュミステリー。孤児院で育ったヒロインは赤毛のアンにあこがれ、つらい境遇にもつねに明るく振る舞う。そんな彼女が2度目の恋人を刺してしまう。急を聞いた友人達がサポートに立ち上がり、過去にさかのぼり事実を調査。…