2018-01-01から1年間の記事一覧

鹿の王

長編ファンタジー。中世の架空の世界が舞台。犬を媒介とする恐怖の伝染病。人為的に作られた可能性がある。二人の主人公、戦士と宮廷医師がその謎に取り巻く。複雑な権力構造でそれぞれの思惑が交錯する。一方で地方の貧しい部族の人々は暖かく主人公を支え…

西郷隆盛と西南戦争を歩く

熊本を中心としたフィールドワークで西南戦争の実像に迫る。戦勝側の作られた歴史ではなく、薩摩側からの視点がやや多いが、極めて中立で様々な謎に迫る。神輿に乗った西郷自信の読みの甘さ。熊本城炎上の謎と興味はつきない。敗走する薩摩軍の悪あがきも伝…

ディスイズザディ

J2のサポーターたちを主人公とする連作集。架空のリーグ戦を戦う地元チームを応援する彼らにはそれぞれの事情がある。日常生活を離れてサッカーの世界にのめりこむ。ホームだけでなく遠征にもついていき、そこでの交流も楽しい。昇格、降格と悲喜こもごも…

美術館へ行こう

中小ながら独特の価値観を示す美術館を紹介。それぞれの特色を格調高くセンスの良い文章と写真で案内するガイド本。北海道知床から鹿児島までを網羅する。美術館だけでなく博物館、文学館なども含まれる。おやつ紹介はご愛敬。まだまだ行きたいところが多い…

なぜ御社は若手が辞めるのか

タイトル通りの内容。最近の定着率の低さその対策としてのリテンションについて解説。従業員および企業へのインタビューと統計から両社の想いの違いを明らかにする。SNSを通じて噂は拡散するので、連鎖反応や採用へも影響を与える。また辞める理由は一つでは…

SHOE DOG

ナイキの創業者である著者の自伝。大学時代は中距離のアスリート。恩師であるコーチと共同で起業。当初は日本のオニヅカ(現アシックス)の代理店からスタート。日本製の安価と高性能で業績を拡大する。やがて自社ブランドを立ち上げ、オニヅカとは訴訟を経…

新しい分かり方

人間の情報処理手法を解析し、心理学的に問い直す一冊。前半はだまし絵の世界。いかに人は思い込みで認識しているのかがよくわかる。後半はそれにまつわる随筆。こちらも出色の作品がそろう。著者はもと電通マンで独立。NHK教育のピタゴラスイッチで名をはせ…

グレイヴディッカー

ノンストップサスペンス。愛すべき悪党が骨髄移植のドナーとなる当日、殺人事件に巻き込まれたうえ、自ら命を狙われる。事件を追う警察と4つの勢力が絡み合う大チェースが赤羽から六郷まで墨田川沿いに展開される。よくできているプロットだが少し盛り込み…

笑いで天下を取った男

吉本創業夫妻の実弟で、笑いの王国を築きあげた林正之助翁。本書はその伝記小説である。戦前から漫才ブームまで数多くの芸人を育てる。生き馬の目を抜く芸能界だけに修羅場も多く経験。松竹との引き抜き合戦は茶飯事。ただ本領は芸人の実力を見極め、先の流…

天切り松闇語りライムライト

天切り松シリーズの最終巻。相変わらず格好いい盗賊の面々が人情話を語る。最後の表題作はチャップリンと五一五事件。全体として安心して愉しめる構成。天切り松 闇がたり 5 ライムライト (集英社文庫)作者: 浅田次郎出版社/メーカー: 集英社発売日: 2016/08…

パスコースがないじゃあつくればいい

サッカーフリークである著者の観戦ノートがベース。技術論もしっかりしているが、重きをおくのは人間観察。プレーヤーである前に立派な社会人であるべしが持論。芸能界や一般社会でも普遍の原理。ワールドカップ前の日本代表には手厳しが批判は的を得ている…

北の五稜星

函館戦争を戦い抜いた浦賀奉行所の若者たち。最大の戦力の開陽を座礁させたところから物語はスタート。陸戦に廻り覚悟の最期を迎える。死に場所を求める若者と、生かそうとする首脳陣の対立。唯一生き残った主人公には厳しい新時代が待っていた。函館訪問の…

日本史の謎は地形で解ける環境民族編

シリーズ第三弾。本職の治水事業と歴史を結びつけるエッセイ。なかなか面白い。今回のテーマは湿地。日本の農業は湿地の開発の歴史であった。水に浸かりながらの田植えの写真は衝撃。他に正倉院が盗掘されなかったのは奈良町のコミュニティの監視の目のため…

優れたリーダーはみな小心者である。

ブリジストンのCEOとして、辣腕を振るった著者のリーダー論。原経験は若い時代のタイでの在庫管理と秘書室長としてのファイアストーンの買収。繊細な神経を束ねて図太くする精神力がリーダーには重要と説く。組織の理想を明確にし、現状からの差異を埋めるこ…

敗れても敗れても

東大野球部の苦闘の歴史を記録した一冊。沖縄戦を指揮した最後の官選知事は戦前の名選手。覚悟を決めて死地に赴く。今島守として現地の尊敬を集める。戦後は私学の補強の中で、文武両道は苦戦を強いられるが好投手のいる時に花を咲かせる。野球はやはりピッ…

楽園の蝶

戦中の満州。闇の帝王である甘粕が理事長を務める満州映画撮影所。京都のボンボンである主人公はさっそくさまざまな事件に巻き込まれる。謎を解くうちに満州を取り巻く様々な勢力に振舞わされることになる。最後は大逆事件まで遡る。歴史ミステリー。クルー…

熱海の奇跡

温泉地熱海も御多分にもれずシャッター街となっていた。著者を中心にした民間ベースで再生を図る。リノベーション街づくりを目指し、30代のクリエイティブな人々が集まる街をビジョンに掲げる。まずは拠点となるカフェを創設。人のネットワークを拡げていく…

サラリーマン2.0

忙しい広告代理店のサラリーマンが週末を使い世界をたびする。観光旅行でなく現地の人々との本物の交流が目的。結果が評判を呼びメディアに露出。出版に繋がった。羨ましいばかりの若さとヴァィタリティ。称賛したい。 −旅と旅行は全くの別物。自分を探すの…

社風の正体

会社の文化である社風の研究所。主として文献からの引用、解釈が多い。社風は本来発展のための武器となるべきものであるが、最近は東芝や神鋼の例を引くまでもなく弊害の方が多い。時代に合わせて変えていくにはエネルギーを多とするが、トップの仕事ではあ…

美貌のひと

古今の名画から、美貌の肖像画を取り上げ、そのエピソードを紹介する。ほとんど女性だが、なかには自画像を含め男性も。モデルと画家の両面から掘り下げ興味深い。ヨーロッパに今も続く身分意識の深さが繰り返し述べられる。図像はカラーで読みやすいシリー…

大富豪からの手紙

ドラマ仕立てにした人生観。祖父から託された9通の手紙。それに導かれるように京都、タイ、ブータンと旧友を訪ねる。話はもちろん出来過ぎでハッピーエンド。主張はスピリチュアルな部分もあるが、完全に世間離れではなく頷けない訳ではない。どうとらえる…

そこそこやるか、そこまでやるか

秀岳館高校をわずか三年で全国ベスト4まで導いた鍛治舎監督の自伝。県岐阜商から早大ではスター選手。ドラフトを拒否して松下電器へ。人事畑での仕事が評価され専務まで昇進。長年の夢であった高校野球の監督へ華麗な転身をとげる。リーダーとして大事にし…

仕事ができる人はなぜワインにはまるのか

表題通りの軽い読み物。「ソムリエ」誌のインタビュー記事をベースに編集。特に若手のIT関係経営者には愛好家が多い。ワイン自体のもつ奥深さに好奇心がマッチする。実務としては食事の時に話題とそこからの交友関係の広がりに貢献。まあ予想通りの内容。初…

仕事ができる人はなぜワインにはまるのか

表題通りの軽い読み物。「ソムリエ」誌のインタビュー記事をベースに編集。特に若手のIT関係経営者には愛好家が多い。ワイン自体のもつ奥深さに好奇心がマッチする。実務としては食事の時に話題とそこからの交友関係の広がりに貢献。まあ予想通りの内容。初…

激動の世界を行く

大越キャスターの取材記。BS1で放送されたドキュメンタリー。北朝鮮、メキシコをはじめ世界情勢の焦点となる地域を実際に訪ねる。バルト3国が目新しい。現地のコーディネーターと協力して地道に取材する。どこにでも入り込み本音を引き出すのは著者の人間力…

淳子のてっぺん

日本女子登山家のパイオニアでエベレストに初登頂した田部井淳子女史の伝記小説。子供の頃から山に魅せられ、女ながらに谷川岳の岸壁に挑む。女子だけの隊でヒマラヤに挑戦。副隊長として隊内の調整に腐心する。誰もが頂上に登りたがりサポート役は嫌がる。…

長く高い壁

中国戦線。北京近郊の長城で留守部隊の守備隊が全滅する。従軍記者の冒険作家が謎ときに派遣される。憲兵の監視のもと、関係者に尋問。見事に謎を解いて見せる。結果は中国人協力者による復讐だが、守備隊の中にも協力者が存在した。公表できるはずもなく真…

ゴッホのあしあと

最新作である「たゆたえど沈まず」の取材記。ゴッホの足跡を追い、自らの創作の部分を明らかにしていく。著者にとってゴッホは特別な画家、残した文章からは非常に思慮深いインテリの人格を感じ取っている。世にいう狂気の部分は否定する。2度美味しい商売…

オリンピックへ行こう

代表選考を題材にした3本立て。卓球、競歩、ブラインドサッカーとマイナーな競技を取り上げる。スター選手でなく当落線上の主人公が最後の望みにかけて奮闘する。裏に人間ドラマを織り交ぜるところは流石だが、卓球のラリーの記述はさすがに難易度が高い。…

アメリカ本土を爆撃した男

太平洋戦争中、伊25号搭載の水偵でオレゴン州を爆撃。ドーリットルの報復を果たしたパイロットが主人公。戦後アメリカに招かれ英雄として称賛される。日本政府は何もしていないのと好対照。その後日米の親善に努め、自費で高校生をつくば万博に招待する。…