仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ

尼崎立花駅前にある小さな本屋小林書店。ここの名物女性店長が取次の女性新人を導くというノンフィクションノベル。出版不況の中工夫と熱意で、顧客の信頼を勝ち取り、店を守る。よく気のまわるご主人の裏方として貢献。ノベルの部分はもちろん出来すぎであるが、各所でエピソードをはさみ一気に読ませる。本屋を愛する著者ならではの一冊。かなり甘めだが、店長に敬礼のA評価。

 

 

 

食王

外食産業が舞台。一代ですしチェーンを築き上げたオーナー社長。麻生の新ビルでの新規事業展開を模索するが、社内からはなかなか提案が上がらない。バイトの女子学生からの提案で地方再生を結び付けたポップアップレストランの開業にこぎつける。ありがちな社内外の思惑や人間模様でハラハラさせるところは王道。会話文が多くスピード感をもって読破。ボリュームは感じさせなかった。

 

 

食王

食王

 

 

 

日本再生のためのプランB

現在日本が進めるITを中心とした産業の高度化(プランA)はすでに頓挫しており、将来もないと結論。それに代わるものとしてプランBを提案する。具体的には予防医療を中心とする地方のサービス産業化による構造の転換。高齢化によりすでに医療従事者への需要は高い。特に地方への分散を図ることでコストの低減、富の再分布が期待される。もう一方の大きな柱が東アジア経済圏の確立。韓国、台湾と連携しアメリカ一辺倒の外交から脱却。価値観を同じとするが歴史を乗り越えられるかが鍵。著者は医療経済学者。アメリカで長期にわたり活躍し、その本音を知るだけに主張には重みがある。刺激的な提言。

 

 

 

大阪

共作エッセイ。大正区育ちで大阪を出た小説家の柴崎氏、大学から大阪に住み着き虜となった社会学者の岸氏。それぞれの歩んだ道と大阪との関わりをネタにする。経済的地位の低下とともに、独自の文化も薄れつつあるが、それでも十分面白く魅力あふれる街である。世代的には少し若いが共通項も多い。身近な感覚で楽しめました。好著である。

 

大阪

大阪

 

 

 

 

金閣を焼かなければならぬ

著者は精神科医。サブタイトルにあるように修行僧で放火犯の林養賢と名作「金閣寺」を著した三島由紀夫精神分析を行う。林は明らかな精神分裂症。ただし発症は事件後。三島は自らのナルシズム打破を作品に託する。正直専門的なところは難解。評価は難しいところ。

 

金閣を焼かなければならぬ

金閣を焼かなければならぬ

  • 作者:内海健
  • 発売日: 2020/06/20
  • メディア: 単行本
 

 

宝塚歌劇団の経営学

宝塚歌劇の優良な経営モデルを経営学的に解析する。小林翁の創設から営々と培ったビジネスモデル。格好いい言葉にすると垂直統合=自前主義とファンとの価値共創。品質とコストで戦えるモデルは終焉した。歌劇団とは組織上独立しているファンクラブの存在が大きい。男役10年の成長をともに喜び、退団を見届けると次のループに入る。興味深く一気に読んだ。やわらかめのビジネス書の位置づけ。甘めのAは題材によるところが大きい。

 

宝塚歌劇団の経営学

宝塚歌劇団の経営学

  • 作者:森下 信雄
  • 発売日: 2021/02/19
  • メディア: 単行本
 

 

 

山奥ニートやってます

和歌山県紀伊山地の山奥での共同生活。廃校となった小学校を改造し、15名のニートがゆるい生活を送る。人口5人の限界集落の過疎対策NPOが発端。定職は持たずアルバイトで生計を立てるが、物価が安く自活可能。彼らの生活感は極めてゆるく、あくせく働くことは拒否する。それぞれ過去の事情はあるようだ。都会でひきこもるよりははるかに良い。見学者が絶えないことも頷ける。諸手をあげて賛同はできないが、一つの考え方を知ったことは収穫。

 

 

「山奥ニート」やってます。

「山奥ニート」やってます。