ガリンペイロ

アマゾンの奥地、一獲千金を夢見て金を掘り続ける男たちガリンペイロ。その実像を追うノンフィクション。すべても者が名前も過去も問われない。お調子者の若者が現地に乗り込み、やがて失踪するまでを軸に描く。掘削は意外と組織化、近代化されてはいるが、金鉱主に圧倒的に有利なルールが支配する。様々な人間模様が展開するが、それを見る著者の視点は温かい。NHKの取材記であるが、フィクション的な要素も感じられる。知らない世界を知りえたことは収穫。

 

 

ガリンペイロ

ガリンペイロ

 

 

 

 

洋画家の美術史

明治から現代まで日本を代表する洋画家16人の作風を紹介する。それぞれに影響を与えた西洋の画家や南画を「成分表」として表すなど新しい試みで興味深い。日本文化を古今東西のコラージュと位置づけ、洋画も模倣ではなく独自の発展を遂げたとする。自らの私蔵品を含め、カラーで口絵に掲載。入門編ではあるが好著である。

 

今回知った画家

長谷川利行

曽宮一念

島崎青児

須田剋太

 

 

洋画家の美術史 (光文社新書)

洋画家の美術史 (光文社新書)

 

 

働くあなたの経営学

若手に向けて書かれた経営学の入門書。実践に応じた学問領域を実例をあげて説明する。章立ては戦略論、組織論、リーダー論。内容的にはきわめて常識的で斬新なものはない。読者にはさまざまなことに積極的に取り組むようにアドバイス

 

 

 

リーダーの禅語

禅の教えのエッセンスからリーダーの取るべき指針を語る。5つの徳目、風格、育成力、平常心、行動力、信頼力にそれぞれ10の至言。根底にあるのは社会への貢献。内容的には極めて常識的な話で、かなり実践できているとは思うが、言霊の重みは感じる。いくつかは肝に銘じて自戒の種とした。

 

-善悪難定 (100年後も正しいか)

-形直影瑞 (形直ければ影瑞し)

-薫習   (まねされるリーダー像)

-喜捨   (受けた恩は石に刻み、与えた恩は水に流す)

-一笑千山青(一笑すれば千山青し)

-閑古錐  (使い込んだ古い錐)

 

 

 

それでも気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている

メジャーからマイナーまで外食チェーン店を探訪。食レポというよりは世評を斬る。簡潔にユーモアあふれるエッセイは親しみがもてる。中には知らない店も。これが第2弾で2017年頃の雑誌連載。文庫化にあたりアップデートはされている。コロナの影響もあり栄枯盛衰は激しい。基本的に外食業界を見る目は温かい。

 

 

 

 

 

生きる職場

メディアで話題のエビ加工業。パート社員の勤務を全くのフリーにし、さらには嫌いな作業はしてはならないなど、働き方を自主性に委ねる。著者は創業家の2世だが営業担当で工場からは憎まれ役で、経営方針としてはがっちり管理系。天気となったのは大震災。石巻の会社を大阪に移転。同じく避難したお母さん方に職場を提供。二重債務で苦しむが、社会への貢献、働き方改革と根源的につきつめて今の形となった。根底にあるのは性善説。会社がこれだけのことをやれば、社員は応えてくれるとの信頼感。規模の大小によらぬ真理とは耳が痛い。原発への拒否感も極めて強い。一時のブームに終わらぬように期待したい。

-フリースケジュールの根幹は親族の働き方

 

生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方

生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方

  • 作者:武藤北斗
  • 発売日: 2017/04/16
  • メディア: 単行本
 

 

ナウシカ考

風の谷のナウシカ、マンガ版を論考する。著者の専門は民俗学。作品自体が神学や哲学的な内容を含み、世に問うものが多いのは万人がうなずくところ。本書では原作から数多く引用しつつ自らの解釈を述べる。ラストの墓の主との対決が主題。あまり目新しい解釈ないが、黙示録に代表されるキリスト教的な二元論への忌避。ドフトエフスキーによるポリフォニー形式との類似が示される。こちらも原作かなり読み込んでいるがまだまだ足りないか。

 

-母性の欠如。老人(祖父)の頼りがい

-火をつかうことの是非

-一神教とアミニズム

 

ナウシカ考 風の谷の黙示録

ナウシカ考 風の谷の黙示録

  • 作者:赤坂 憲雄
  • 発売日: 2019/11/22
  • メディア: 単行本