白光

明治期の女流聖像画家山下りんの伝記小説。笠間の没落士族の娘だが、絵心にたけ東京で修行。芸大の前身である工部学校で学ぶ。その後サントペテルブルグの修道院へ留学。ニコライ聖堂で聖像画家となる。まさに波乱万丈の人生。主題は芸術と信仰の葛藤。特にロシア留学中は衝突を繰り返す。伝統の正教美術を重んじる教育側ととルネッサンス美術への憧れを抱く学ぶ側。同じ葛藤は帰国後教える立場となった彼女にも訪れる。もう一人の主人公はニコライ主教。背景にはロシア正教の苦難の歴史。特に日露戦争時の日本、ロシア革命時は現地でも迫害の対象となる。500頁近い大作。読み応えのある一冊。ニコライ聖堂に行かなくては。