奇跡の人

長編。交通事故で一度は植物人間状態となりながら、八年ぶりに退院に社会に復帰した主人公。ただ事故以前の記憶はなく、それを探るべき記録は今は無き母の手で抹消されていた。自分を知りたい彼は一人で東京への旅に出る。知り得た過去は決して明るい者ではなく、かっての恋人や友人もそれぞれの生活、事情があり過去から急に現れた過去を手放しでは歓迎してくれない。自暴自棄になり体内に潜んでいた暴力性が表に出てくるが、最後はタイトル通り2度目の奇跡を起こす。事故により2度目の人生を始めた時は、子供のように無垢であるが、成長した元の大人の自分は純真でなくギャップに苦しむ。ミステリーいうよりは一般小説に近いが、570Pを一気に読ませる展開力はさすが。

奇跡の人 (新潮文庫)

奇跡の人 (新潮文庫)