消えたヤルタ密約緊急電

太平洋戦争の末期。ストックホルム駐在武官である小野寺少将は、ソ連参戦の情報を入手。東京へ打電するが、情報が活かされた形跡や入電記録自体が残されていない。ソ連を仲介とした和平工作を進めていた参謀本部に都合の悪い情報は意図的に抹殺された形。ルポは張本人として当時の作戦課長瀬島龍三を挙げる。戦前日本陸軍の諜報力は世界に誇れるもので、ポーランドリトアニアなど欧州の中小国と連携を取り、ネットワークを作り上げていた。資金援助も豊富に行っていた。貴重な情報を自分たちの願望に近い政策に会わないからと無視した中央の罪は重い。ソ連の工作まで疑われる。一次情報の大切さとその分析力の重要さが思い知らされる。本格的なルポで読破には力を要した。

消えたヤルタ密約緊急電―情報士官・小野寺信の孤独な戦い (新潮選書)

消えたヤルタ密約緊急電―情報士官・小野寺信の孤独な戦い (新潮選書)