密約

佐藤長期政権の末期。沖縄返還協定をめぐって日米間の密約をスクープした毎日新聞の敏腕記者が、そのニュースソースは外務省の秘書役の女性事務官で、男女関係をエサに機密情報を持ち出させたとして二人とも罪に問われる。高度な政治的な問題が、男女のスキャンダルにすり替えられる。本書は裁判を傍聴記録をベースにした本格的なルポ。最初から不幸な被害者を演じ争うことをしない女性被告には疑問の目を向ける。記者は一審では無罪を勝ち取るものの、控訴審では敗れ国民の知る権利についての明確な司法判断はなされなかった。著者無名時代の作品だが、読み応えのある重厚なルポ。再版されたのもうなずける。

密約―外務省機密漏洩事件 (岩波現代文庫)

密約―外務省機密漏洩事件 (岩波現代文庫)