朝鮮半島「核」外交

とかく観念論に陥りがちな朝鮮半島問題を、ジャーナリストらしい分析力で精緻に解説する。経済的な分析から「儒教共産主義」の北朝鮮は崩壊寸前であるとする。体制維持に死にものぐるいの金正日は決して核軍備をあきらめることは無いと明言。現状の6カ国協議太陽政策は意味が無いとする。北朝鮮がもっとも困るのは無視されること。まさに眼からウロコの鋭い解析と明解な論旨。読み応えのある新書。

  • 韓国の左翼勢力には北に対するコンプレックスがある。北は日本から独立を勝ち取ったが、南は植民地政策の協力者であった。
  • 冷戦終了後、中国が国連で拒否権を使ったことはない。北朝鮮問題での使用はあり得ない。台湾問題では別。ただし米国の意向には反対の表明をし、その存在を誇示する。
  • 北朝鮮は崩壊か核放棄の2者選択を強いられない限り、核放棄しない。ヒル次官補の中途半端な「お土産」はまったく意味がない。
  • 戦争の原因は「過度の恐怖」=北朝鮮アメリカの侵略を恐れる。アメリカはイラク大量破壊兵器を恐れた。「指導者の判断の誤り」=交渉カードとして「核の魔力」にとりつかれた。フセインはクエートに進行しても国際社会は黙認すると思いこんだ。
  • 北朝鮮で改革を行うことは金日成の方針が誤っていたことを批判することになる。「親不孝」の烙印を押されると指導者としての正当性も失う。
  • 北朝鮮の経済力では、通常戦は2週間しか持たない。経済規模は島根県程度
  • 北朝鮮の石油の輸入量はわずか60万トン、日本は2億トン超。