閉鎖病棟

九州太宰府近くの精神病院を舞台に、患者たちの日常を描く。それぞれ重い過去や傷害を引きずりながら、他人を思いやる心を忘れず、むしろ極めて純粋に生きようとする。心に傷を持つ少女に対する暴行がやがて覚悟の殺人事件を呼ぶ。健常者は家族に代表されるようにむしろ、病院の中に安息の日々があるのではと思いがちであるが、あくまで退院して日常生活に戻ることに希望がある。いつもながら重いテーマを真摯に描く作者に脱帽。精神科医だったことは解説で初めて知る。

閉鎖病棟 (新潮文庫)

閉鎖病棟 (新潮文庫)