アンノウン

空自のレーダー基地で盗聴器が発見された。調査にあたったのは防諜を担当する調査部のエリートと現場の若手三曹。結果は出世争いに端を発する内部犯行という落ちで尻切れトンボの印象はぬぐえない。もっとも本書のテーマは謎解きではなく、自衛隊の存在意義を問うことにある。厳しい訓練のわりに存在目的が明確でなく、周辺住民からは嫌われる。創設以来のジレンマに現場は今も苦しんでいる。現場や組織の臨場感あふれる細かい描写は元自衛官たる作者の真骨頂。いずれにせよ自衛隊を部隊にした異色のミステリー。次作に期待といったところか。

アンノウン (文春文庫)

アンノウン (文春文庫)