金正日隠された戦争

北朝鮮金正日政権の罪を弾劾する衝撃の書である。その実態は軍事独裁政権であり、権力維持のためには反対勢力は無論、実父である金日成まで謀殺したと断言する。飢餓による数百万の餓死者はまつろわない北東部の住民に対する虐殺であり、金日成は電力政策、対米政策の路線の違いから意図的に排除された。真実は闇の中であるが、複数の脱北者の証言で事実認証を進めていく。作者自身があとがきで述べているようによくこの内容を文芸春秋が出版したものだ。北朝鮮は外交手腕に長けており、韓国民、日本を人質にして米国(実際には日韓)から巨額の援助を勝ち取り、それで核軍備を進めている。援助物資は決して飢えている弱い(vulnerable)な人々に届くことはない。提言として南アフリカアパルトヘイトを終焉させたような、ハードシップな制裁が必要と強調する。元赤旗の記者らしくイデオロギー的な臭いは感じるもののジャーナリストとしての勇気ある告発には拍手。571