福島原発事故の現実を追ったドキュメント。菅政権、経産省、それに東電がそれぞれの思惑で迷走する。緊迫した事故現場の記述は前半の1章のみで、後半は東京での権力闘争。事故直後は東電も保安院も全く打つ手がなく、連絡体制の悪さもあって、対応は現地任せに。次々と複数の原発で水素爆発が起こり、放射能の高さもあってなかなか有効な対応は打てない。トラブルの連発は技術屋としてはよくわかる。最悪の事態を救ったのはベントの英断と担当者の決死の努力である。経産省は原発推進、電力会社の国体維持の既定路線から離れられない。真の被害者である国民は置いて行かれている感が強く、怒りを感じる。作者は朝日新聞系の記者でもあり全般的に菅首相には好意的。官僚の巧みな策略により結局退陣を余儀なくされた。
- 作者: 大鹿靖明
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/01/28
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 175回
- この商品を含むブログ (27件) を見る