名もなき毒

久々の宮部長編ミステリーは暗い話である。毒物混入による連続殺人事件を下地にするが、土壌汚染になぞらえて一般人に巣くう毒素を題材にする。主人公は幸運にも資産家の娘と結婚した編集者。無欲で平凡だがあまりに邪気が無く、帰ってそれが周囲の毒をもつ人々を呼び込むことになる。多彩な登場人物を描き、一気に読ませる。こういう作品を人気作家が書くところが、現代日本の病める深層とも感じる。

名もなき毒 (カッパ・ノベルス)

名もなき毒 (カッパ・ノベルス)