南大門の墨壺

重源による東大寺の鎌倉再興を題材とした歴史小説。南大門から発見された墨壺をモチーフに物語をふくらませたフィクションだが、墨壺の持ち主である東大寺の宮大工である主人公は、技術的には秀でているものの、人間関係が不得手で「木組み」より配下の「人組み」で苦労する性格。南大門と播磨の浄土寺という現存する天竺様建築を担当したとする設定。仏師として傲慢な快慶が登場するところはご愛嬌か。影の主人公は重源上人で、資金難、旧守派との争い、時には政争に巻き込まれながら大事業を達成する。一般的には意外と評価されていない歴史上の快挙を紹介する秀作。1785


南大門の墨壺

南大門の墨壺