暁の密使

日露開戦直前、廃仏毀釈で苦しむ日本仏教を救おうと、チベットへ仏典を得るため旅だった学僧は本人も知らぬうちに日本政府の密使の使命を帯びていた。なんとも魅惑的な設定で、清朝末期の混沌の中国を苦難の旅、一気に引き込まれた。立場はことなれ主人公能海の人間的魅力にひかれ、彼を助けることになる中国人とチベットの山の民。英国、ロシアと列強の思惑もからみグレートゲームが展開される。ラストの結末のつけかたは冷静に考えればこれしか無いように思えるが、ここまで主人公に思い入れて読んできた身には酷に思える。歴史の現実の厳しさであるが読後感が若干悪い。

暁の密使

暁の密使