あの男の正体

一部上場の中堅商社が舞台の不思議な企業小説。2代にわたるトップとその社長秘書の複雑な関係。初代に心酔する主人公である「あの男」は一旦殉死により辞職するが、初代たっての頼みで社長を引き継ぎ、豪腕で権力を手中にする。一見リストラとも見える改革で、部長クラスを独立させ活性化を図る。もうひとつ引き継いだのが有能な秘書。2代にわたり愛人も兼ねる。そこには財産を譲りたい初代の遺志が隠されており、最終的には大株主として後継を決める立場になるという意外な結末。経営トップの孤独と会社人間の悲哀がよく描かれているが、著者の古今の名作に対する造詣の深さも随所に感じられる作品。

あの男の正体(ハラワタ)

あの男の正体(ハラワタ)