水曜の朝、午前三時

名作である。思わず引き込まれてしまった。45歳で急逝した才女が愛娘に残したテープ。そこに残されていたのは大阪万博のホステスとして働いた時に巡り会った一夏の激しい恋。結局男性が在日だとわかって破局を迎えるのだが、どうしても伝えなければならない真実があった。当時の良家の子女としておそらく珍しく親に決められた人生に反発し、自分の心に正直に生きようとする。決して後悔しない自らの生き方を死に直前して娘に伝えようとする言葉には重みと含蓄がある。大阪万博は戦後日本のターニングポイントである、「おかげ詣り」であったとする時代感覚には共感。国を挙げての行事に集められた優秀な男女には当然色恋はあっただろう。

水曜の朝、午前三時 (新潮文庫)

水曜の朝、午前三時 (新潮文庫)