流星ワゴン

主人公は38歳の父親。自らのリストラ、妻の不倫、子供の受験失敗と家庭内暴力と最悪の状況に、自殺をも考えていたところに、そのワゴンは現れる。運転するのは交通事故死した親子で成仏できず現世をさまよい、迷える同胞をタイムトリップで過去の分岐点に連れて行ってくれる。言わば重松版バックツフューチャーだが、ハリウッド映画と異なりいくらもがいても、現実を変えることは出来ず、逆に何も気づいていなかった過去の自分の愚かさを知ることになる。救いは精一杯の努力をすることで後悔をぬぐい去り、家族のために前向きに生きる気力を得ること。途中から同年代の朋輩として登場する末期の父親とも理解し合える。都合3組の親子しかも父と息子の男の繋がりを一気に描く。正直脱帽。中年男にはたまらない一冊。作者の才能に嫉妬する。

流星ワゴン (講談社文庫)

流星ワゴン (講談社文庫)