ワルシャワの燕たち

舞台は1990年改革途上ののポーランド。ジャーナリストの恋人を連れ戻しに日本からやってきた中年の主人公は元ラリーレーサー。彼女の部下で日本語の達者な現地の若者と何かと競うことになる。変革の息吹に魅せられポーランドに止まる決意の彼女を残し失意の帰国をする。深夜のワルシャワで公道レースを挑む男のダンディズム。表題の「燕」は虐げられらた歴史のの中でも祖国を深く愛するポーランドの人々を意味する。ようやく巡ってきた羽化の季節に活き活きとするワルシャワの街の様子が巧みに描かれるが、特に文化科学宮殿(共産主義)とマリオットホテル(資本主義)が代表するワルシャワの風景が時代を象徴する。実は作者の著作は初めてだが、個人的になじみのある背景を割り引いても予想以上に高評価。軟派というレッテルは見直すべきか。

ワルシャワの燕たち

ワルシャワの燕たち