クアトロラガッツィ

天正の遣欧少年使節。一般の日本人には史実として知識はあるがその詳細は知られていない。本書は東西の歴史の転換点にある4人の若者とそれを取り巻く人々の一大ページェントである。丹念に一級史料を調査し、戦国時代末期での日本のキリシタンの状況を様々な角度から検証する。当初の派遣の目的は日本での布教拡大のための経済援助と宣伝効果、少年使節自身への教育と伝道者としての育成であった。ローマ法王庁からみれば極東の島国の王族からの使者は、宗教改革後のカソリック側から見ても一大行事であり、プロパガンダとして東方三博士になぞらえて一大儀式にしたであろうことは納得できる。一方日本では出発直後に本能寺の変が送り、使節が帰国する頃にはキリシタンは落日の日々を迎えていた。その後の四人の足跡は、殉教、病死、背教と過酷なものであった。一般には成果をあげれなかったとして評価されない使節について、自己の信念に生きた個人として高い再評価を熱く訴える。文庫上下巻で1000頁近い労作。引用の多い学術書に近いため読破は結構苦しむ。この時勢によく文庫化を決意したものと編集者には敬意を表したい。

  • キリスト教は死後、天国(神の国へ)招かれることを目指し、仏教は輪廻からの解脱を目指す。
  • 少年使節は、幼児洗礼を受けた、日本キリスト信者の初穂
  • 教育は明日へ向けての「浪費」
  • ピレネーの西にヨーロッパはない
  • 五角形は死角がないため、要塞に適する。ペンタゴンの由来。