枢密院議長の日記

検察官から宮内省、最後は枢密院の議長を務めた高級官僚、倉富勇三郎の膨大な日記をまさに解読する。本人が病的な記録魔で日常の些事から、大好きな人事関係のゴシップまで極めて事務的に記されており第1級の資料であることは確か。読み手を全く意識せずただ記録することに意義を見いだす姿勢に著者が共感している。大正10−11年に焦点をあて、明治維新の名残の守旧派から近代的な皇室にならんとする時代の皇室、華族の内情が中心。逆に政治的に無色であったが故に枢密院についてはむしろ名誉職に近く、その組織の位置づけの影響もあるが、昭和に入ってからの動乱については記述が少ない上に主観的なものとなる。著者らの努力によりずいぶん要約されていながら、圧倒的な分量で一般人の読書の対象としては正直重くつらい。


枢密院議長の日記 (講談社現代新書)

枢密院議長の日記 (講談社現代新書)

  • 5年間5人の輪読会でもまだ全貌は明らかになっていない。