日本はなぜノーベル化学賞につよいのか

2000年から2002年にかけて、日本の化学界は3人のノーベル化学賞受賞という輝かしい時代を謳歌する。特に3人目は民間の若手研究者である田中氏であり大きな話題となった。本書ではその経歴と研究成果をきわめて平易に解説する。島津製作所は組織よりも研究者の個性を尊重した。受賞対象はタンパク質の質量分析基礎技術であるが、氏の根気強いスクリーニングと偶然を見逃さない眼力(セレンビィリティー)が成功の要因である。ただしこの成果は日本市場ではビジネスに結びついていない。あらためて賞の選定の慧眼に感服する。現在を顧みて日本の理科離れに警鐘を発する。学生だけでなく一般人に対しても常に先端科学技術に注視すべきとする。技術系管理職には耳が痛い。