神様からひと言

旧態依然とした中堅食品メーカーへ途中入社した主人公が、問題社員の掃きだめである「お客様相談室」配転させられる。全体のプロットは同じ著者の「メリーゴーランド」によく似ていおり、相談室のメンバーがデフォルメが効いて個性的で充分笑わせてくれる。特に競艇狂いでありながら、プロの謝罪屋である篠崎主任が強烈であるが、その人物観察眼と意外と真摯な生き方に触れ、人間として成長していくというストーリー。最後の社内抗争はまあドタバタだが、一度別れた恋人を探し当て復縁するラストは誰もが納得する大団円。会社という閉ざされた社会であくせくするおでんの具であるサラリーマンは痛烈に皮肉る。鍋の外にはまた別の世界、大事な何かがあるよと読者を励ます。秀作。

神様からひと言 (光文社文庫)

神様からひと言 (光文社文庫)