M8

東京直下型地震の恐怖を描いた近未来SF。主人公は神戸の大震災を経験し、家族を失ったポスドク。自ら開発したシュミレーターで大地震を予知する。判定委員会はそれなりの兆候をつかんでいるものの東海地震を想定しており、有効な警告を打てない。このあたりのジレンマが前半の山場。元教授や民間団体の奔走で都知事の英断を取り付け、演習名の警戒態勢を取る。後半はM8発生からの修羅場。2万人の死者の大惨事だが、描かれるのは関係部署の献身的な活躍による救出劇が中心。エンタメ小説の形式を取っているが警告の書である。兵庫大震災から13年。一部で風化しつつある被害体験にどう取り組むべきか。政府も個人も日常に追われ有効な対策が取れてないのが実情。考えさせられる一冊。


M8(エムエイト) (集英社文庫)

M8(エムエイト) (集英社文庫)