[書評]悩む力

現代社会に生きる苦しみに真正面から挑む啓蒙書。先達として夏目漱石とマックスウエーバーを引用する。いずれも急激に発展した近代社会の末流としての自己の存在に悩み、解答を求めた人生であった。章ごとに命題を決めて比較的平易に問題を提議する。作者なりの回答は用意されているが、本書は読者に悩むことを求めている。全体の印象としては極めて常識的、現実的な回答で、一般人は一読して安心できることがベストセラーの理由か。680

問われているのは「私=自我」「金」「知識」「信仰」「青春」「労働」「愛」「死」「老い」

  • 他者と相互に承認しあわない一方的な自我はありえない。
  • 知識は時代の進化に伴い、上滑りしがちだが、求むべき社会と密接に関連する。
  • 労働の目的は他者からのアテンションを得るため。
  • 愛とは相互の問いかけに答えて行こうとする意志のこと。