となり町戦争

小さな地方の町が、事業として起こしたとなりまちとの戦争。まったく無関心な市民たちの中で「僕」は偵察員に任命され、役所の担当職員である女性と偽装結婚をし隣町に住むことになる。何のための戦争なのか実態はどうなのか、最後まで説明されることはない。その不条理の中で、確実にしかも身近な人々に死が積み重ねられていく。終戦とともに心の通じ合った彼女とも別離の時が来る。戦争の目的とは本来誰しも納得させるものでなく大義名分に過ぎないのであろう。「見えない限り何もなかったことになる。」前半はお役所仕事に笑わされるが、後半は考えさせられる展開であった。小説すばる新人賞受賞作。

となり町戦争

となり町戦争