長崎ぶらぶら節

直木賞受賞。明治から昭和初期にかけて長崎、丸山に生きた芸妓の一生。貧しいが故に花街に売られ、容色のために美しい姉妹と比較され、必死で芸を磨き、常に誇りを持ち続ける一本筋の通った生き方。地元の学者であう古賀十二郎に恋をしつつも、その歌の収集に協力することで思いを貫く。安易に関係を結ばない大人の恋慕である。肉親とも思う少女の結核を治すため身代をつぶし、完治を見届けたとたんに自らが倒れてしまう。出生の秘密を含め孤独な一生であったが、周囲に惜しまれての最期であった。本筋とは関係ないが、キリシタンの信仰、条約により廃棄された戦艦「土佐」の見送り等、その時代の長崎を見事に描ききる叙情性にあふれる。主題云々より雰囲気を楽しむべき逸品。

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