聖女ジャンヌと娼婦ジャンヌ

フランスの救世主であるジャンヌダルクの奇跡の陰に、それを演出した策士であるもう一人のジャンヌが存在した。ひたすら神の言葉を信じ、理想に進むダルク(ラピュセル)と、不幸な身の上が故に10歳にして娼婦とならざをを得なかったジャンヌは、神も他人も信じられず、ひたすら自分の才覚で世を渡っていく。二人の生き様の光と影の対比が見事。娼婦ジャンヌは、最後にはジャンヌダルクと忠誠なる騎士アルチュールによりに、魂の救いを得るところが主題。わかりやすいプロットとスピード感で読み応え充分。ややこしい地名や登場人物名も気にならない。藤本ひとみは好きな作家の一人だが、本作品がこれまででベストではないだろうか。

聖女ジャンヌと娼婦ジャンヌ (新潮文庫)

聖女ジャンヌと娼婦ジャンヌ (新潮文庫)