ゆっくり歩け、空を見ろ

今をときめく宮崎県知事の告白小説。当選後再版されたようだが、オリジナル版を読破。芸人時代の3流スキャンダルで失意のどん底にあった作者が、自分の原点を探すため、妾腹の子であったため生き別れとなった実父の消息を探す。探索の旅と過去の思い出が、ほどよく交錯して読む側を引き込んでいく。傲慢で煩悩の固まりのような実業家として描かれる父親、日陰者の妾から苦しい思いで、父と別れたあとむしろ逞しく生きた母親、さらに再婚した朴訥な義父(東国原氏)とそれぞれの親子の情愛をすばらしい文章で描く。ラストで父の亡霊と出会うシーンは出来過ぎの気はするが、存在を信じたいという気は理解できる。これがあって初めて実父を超えることができたのだろう。宮崎弁と時代背景には親近感あり。文句なしの「A」評定。

ゆっくり歩け、空を見ろ

ゆっくり歩け、空を見ろ