未完のファシズム

なぜ昭和の日本は勝ち目のない戦争に突入したのか。陸軍上層部に焦点をあてる中で、トリガーを第一次世界大戦に置く。総力戦となった大戦から学んだことは、「持たざる国」は「持てる国」に勝てないという軍部にとっては認められない事実。このため小畑敏四郎ら皇道派は、タンネンベルク信仰より短期決戦の包囲殲滅戦を志向し、統帥綱領を改訂する。石原完爾は統制経済により時間を掛けて持てる国への発展を目指す。いずれも建前(顕教)と本音(密教)があるのだが、人事抗争等で立案者が去った後、顕教の部分のみが残ってしまった。また明治憲法が分権を重んじたあまり、国家方針として統一が取れなかったという面もある。新たな視線で新鮮な論拠の展開。やや欲張って終盤に焦点がぼけた感はある。

未完のファシズム―「持たざる国」日本の運命 (新潮選書)

未完のファシズム―「持たざる国」日本の運命 (新潮選書)