うなぎ丸の航海

本書で初めて知ったのだがうなぎの生態は意外と解明されていない。特にニホンウナギの産卵場所の特定は東大海洋研の塚本研究室の30年にわたるライフワークであり悲願であった。著者は取材名目でなかば強引にうなぎ丸こと海洋調査船白鳳丸に乗り込み研究生活を共にする。通常のTV取材であれば1回で充分なのだろうが、ウナギの謎と7と研究者たちの真摯な姿に取り付かれ、合計5回航海を共にし、門前の小僧よろしく、最後は立派な専門家として感動の発見に立ち会うことになる。その瞬間は意外と劇的ではなく冷静で重厚な喜びであった。研究者たちの質素かつ生活力のある日常も描かれる。おふざけ的な文体であるが、内容は作者が意識したダーヴィンの航海記に類した科学ドキュメンタリーとなっている。かっての昆虫少年の面目躍如といったところか。意外とおすすめ。惜しむらくは島でのフィールドワークの部分がやや冗長。


うなぎ丸の航海 (講談社文庫)

うなぎ丸の航海 (講談社文庫)