沖で待つ

住宅機器メーカに同期で入社した男女。初任地の福岡でそれぞれ激務をこなし成長していく。このあたりは著者の経歴からして実体験に基づくものだろう。その後男性は地元の先輩女性と結婚し、単身赴任中に不慮の死を遂げる。主人公は生前の「協定」に従い彼のHDDを破壊しに行くところがクライマックス。HDDの中身は離れて暮らす愛妻へのつたない恋慕の詩であった。主演二人の関係はけっして恋愛感情にならず、むしろ戦友、同志に近い感覚。文章は情勢作家にしては、どちらかといえば歯切れよくこぎみよい。現役キャリアウーマンの飾らぬ視点。芥川賞受賞作。他に短編1作。952

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