廃用身

麻痺や障害で動かなくなった老人の手足を切断したデイケアセンターの医師。来るべき老齢化社会での介護の負担を軽減するためにやむを得ない処置であると自説を主張する。脳への血流が増加することで、痴呆の回復も期待できるまさに夢の新治療法のはずであった。マスコミに取り上げられたことで、批判を浴び、治療を受けた患者の不幸な結末もあり、最後は医師夫妻が自殺する。前半を医師の出版用の原稿、後半を編集者のルポの2部構成でまるで、ノンフィクションのような感を与える。現役の医師ならではの作品。主題は介護問題への警鐘であり問題作である。

廃用身 (幻冬舎文庫)

廃用身 (幻冬舎文庫)