きもの友だち

小学生の時の事故で松葉杖の生活となった主人公の恵美。彼女ははっきりとした性格と素っ気ない態度で容易に他人を寄せ付けないが、不治の病におかされた少女と二人の間には他人には窺い知れない深い友情を育む。恵美の弟、ブンは万能選手の人気者。この二人を軸にまわりをとりまく脇役たちを各編の主人公に据えた連作で構成される。いずれもグループの中心にはおらずコンプレックスや人間関係の悩みを抱えているが、恵美の素っ気ないが的を得たアドバイスで問題に向き直り解決していく。作者=恵美の視点はつねに弱い者に暖かい。こういう青少年ものを書かせると作者は本当に上手い。技巧だけでなく熱い想いがなせる技だろう。脱帽です。

きみの友だち (新潮文庫)

きみの友だち (新潮文庫)