夜のピクニック

地方の進学校の有名年中行事である「歩行祭」24時間かけて80Kmを踏破するという過酷な伝統であるが、生徒達は恐れながらも楽しみにしている。特に夜になると疲労した肉体から解き放たれるように、各人の悩みや心情が次々と吐露されてくる。ストーリーの軸となるのは異母兄弟の同級生の男女。(よく考えると今時結構無理のある設定。)これまで互いを意識するあまり、口も聞いていなかったのだが、自然と求め合い和解する。周囲を取り巻く個性豊かで魅力的な友人達の深い繋がりと思いやり。作者は一夜の歩行を人生になぞらえ、彼らへの巣立ちへのはなむけとしているのだろう。
青春時代の淡い想い、純粋さを読む側に思い起こさせる名作。登場人物の個性の書き分けも見事。「本屋大賞」はうなずける感動の1冊。

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)